エルダー2020年11月号
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副業および兼業について1働き方改革関連法の改正においても、副業および兼業の承認などにより、新しい働き方を促進していく方針が示されています。また、厚生労働省は、2018(平成30)年には、モデル就業規則において、副業および兼業に関する規定を新設するなどの対応もしていましたが、企業においては、なかなか積極的には促進されていないというのが実情ではないかと思われます。直近では、厚生労働省は、2020(令和2)年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を改定しました。副業および兼業の課題の洗い出しとそれに対する対応方法などが整理されていますので、副業および兼業を承認するにあたって留意すべき事項が理解できると考えられます。労働時間管理について2副業および兼業における課題の一つは、労働時間管理です。労働時間については、原則として、1日8時間が限度であり、それを超える場合には36協定が必要となるほか、時間外割増賃金の支給義務も生じます。これが2社別々に評価されるのであれば、各社が管理する範囲は明確になるのですが、そのような制度はとられておらず、2社の労働時間を通算した場合の限度が1日8時間とされています(労働基準法第32条2項、第38条1項)。さらに、働き方改革にともなう労働基準法の改正により、法律上の労働時間の上限規制が採用され、罰則も制定されており、長時間労働におよんだ場合には、罰則適用のおそれもあるため、労働時間管理の重要性は高まっています。基本的には、労働者から、副業および兼業先の会社における労働時間の報告を受けないと、本業の会社は2社通算の労働時間を知ることができないため、副業および兼業先の労働時間を報告させる機会を定期的に設けておかなければなりません。通算した労働時間を把握した際に、自らの事業場で法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があると考えられています。このように副業および兼業先との労働時間の通算や時間外割増賃金支払当事者の確定などの課題が多いことから、ガイドラインにおいては、簡便な労働時間の管理方法の管理モデルが示されています。本業と副業の両社において、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させるかぎり、ほかの使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働時間管理を遵守できる方策として提示されています。前提として、労働契働き方改革にともない、行政においても副業・兼業の普及促進が図られていますが、実現にあたって使用者が留意すべき事項は労働時間、健康管理、競業回避など多岐にわたります。特に、労働時間管理の点については、十分な理解をしておかなければ、労働基準法違反となる事態を引き起こすおそれがあります。A従業員の副業・兼業を認める際の留意点について教えてほしい副業および兼業を希望する労働者がいるのですが、前例がなくこれまで承認したことがありません。承認するとした場合には、どのような点に留意すればよいのでしょうか。Q22020.1140

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