エルダー2020年11月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー43に配分しないと昇給予算に収まらない場合があります。このように、定員を意識すべき場合は相対評価とするのが妥当ということになります。人事評価制度導入の目的は、人材育成と処遇の決定(「査定」ともいいます)とよくいわれます。人材育成には、基準に対してできた点と改善点を明らかにして、本人と話し合うのが有効です。しかし、処遇に結びつける際には、実務上定員を意識して相対評価で決定していきます。定量評価と定性評価「定量評価」と「定性評価」についても、特徴を押さえてうまく使い分けることが、人事評価の運用上のポイントになります。定量評価は、判定の基準を数値化したものです。先ほど述べた目標5千万円のケースであれば、5千万円に対してどの程度超えたか、足りなかったかで評価が決まります。一方で定性評価は、数値で判断できない貢献や、業務プロセスなどを評価するものです。例えば、AさんとBさんともに売上げ5千万円の場合は、定量評価では標準評価となりますが、商圏の難易度という定性評価も加味すると、難易度が低いAさんよりも、高いBさんの方が高評価となります。仕事の内容によって、定量評価と定性評価の向き不向きがあります。営業職の場合は売上げや利益の数値目標の達成が主なミッションとなるため、数値による評価が容易です。一方で、人事担当や事務職にはむずかしい面があります。例えば、自社で活躍できる人材の獲得が採用上のミッションであるにもかかわらず、採用者数で評価することが前面に出ると、自社には向かない人材まで採用するという行動をとってしまい、本来の目的とのミスマッチが起きてしまいます。また、事務処理をミスなく期日通りに行う業務に従事している場合など、そもそも判定の基準を数値化しにくい仕事は実際にあります。このような場合は、客観性のみを重視して無理に定量評価するのではなく、目ざしてほしい状態や行動を評価者と被評価者でよく話し合い、合意して、定性的に評価していくのが望ましいといえます。人事評価はとてもむずかしい概念的な整理よりもむずかしいのが、実際の人事評価運用です。モチベーションや処遇に影響することから、被評価者の納得度の高い人事評価が望まれますが、どんなに追求しても完成形がありません。二つの主な理由があると筆者は考えています。一つ目は、そもそも人それぞれ異なる仕事や環境、保有している能力のなかで、統一の基準での評価は困難ということです。もう一つは根本的な話になりますが、人が人を評価するのはそもそもむずかしいということです。評価が厳しい・甘いなどの評価の傾向は、人の価値観や性格の影響から免れないといわれていますし、日ごろの評価者・被評価者の関係性が良好でない場合は、評価者がどんなに客観性に配慮して評価しようとも、被評価者からすると評価者への不満が評価そのものの納得度の低さにつながっていくからです。高齢者雇用においても同様で、元の部下がマネジメントを行っている場合などは、評価する側とされる側の立場が逆転します。その状況に高齢者側は抵抗感を持ち、評価する側はやりにくさがあるという話がよく出てきます。これについては、一人の上司が評価を決定するのではなく、複数の評価者の合議で評価を決定する、客観的判断がしやすい定量評価中心とする、評価者訓練などで評価者・被評価者の両者に定期的に意識づけをするなど、お互いが受け入れやすい状況をつくり出すことも必要となります。☆  ☆次回は、今回〝出世〞という言葉で表現した「昇格・昇進」について取り上げる予定です。

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