エルダー2020年11月号
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2020.1144はじめに1先行きの見通せない新型コロナ禍かへの対応で、「高齢者の就業促進どころではない」という声も耳にします。しかし、コロナの動向にかかわらず高齢化は進展し続けることを考えると、コロナ収束後の「新しい日常」においても、高齢者の就業問題に取り組んでいくことが必要です。ところで、高齢化の進展は、程度の差はあれ、先進国共通の現象です。では、欧米では高齢者就業について、どのようなことが議論され、どのような変化や対応が生まれてきているのでしょうか。以下では、これらを整理してみます。さすがに、欧米のことなら何でもありがたがるという時代ではありませんが、異なる環境での対応を知ることは、私たちに多くのヒントを与えてくれるように思えるからです。高齢化の進展と高齢者の就業2よく知られているように、日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は、1990(平成2)年ころまではほかの先進諸国より低かったのですが、その後急激にその割合が高まりました。そして、2000年にはほかの先進諸国を上回るようになり、その後も高まり続けています※1。他方、ほかの先進諸国でも、実は日本ほど急激ではないものの、継続的に高齢化は進展してきています。しかし、高齢者人口が増えたからといって、それがただちに高齢労働力の増加になるわけではありません。その両者の間には、労働力になるかどうかという決定があるからです。それを示すデータが、15歳以上人口に占める労働力人口の割合を示す「労働力率」という指標です。その労働力率を、60〜64歳と65〜69歳の男性に限定して示したものが、図表1です。性別によって労働力率の水準が異なるため、どちらかに限定したほうがその変化が見やすくなるので、ここではその水準が高い男性に限定しました。どちらの図表も、日本が最も高くなっています。日本の高齢者の就業意欲が高いことはよく知られていますが、それが再確認できる結果です。このような国ごとの水準の違いとともに、多くの国に類似したパターンも見出せます。すなわち、1980年ころから1990年代に向かって労働力率が低下する一方、2000年ころから反転し上昇するというパターンです。このようなパターンを示すのは、何が影響しているのでしょうか。一つは、就業側の行動に影響を与えるものですが、高齢期の生活を支え 欧米における高齢者就業とブリッジ・ジョブ明治大学政治経済学部 教授 永野 仁ひとし 欧米における 欧米における 欧米における 欧米における 欧米における 欧米における特別寄稿1 世界でも群を抜いて進んでいるとされる日本の少子高齢化ですが、世界中の先進国もまた同様の傾向にあり、さまざまな形で高齢者の就業に関する政策が講じられています。そこで本稿では、高齢者の就業について詳しい明治大学の永野仁先生に、欧米における高齢者の就業状況と、高齢者就業にまつわる欧米特有の概念「ブリッジ・ジョブ」について解説をしていただきました(編集部)。※1 内閣府『令和元年版高齢社会白書』

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