エルダー2020年11月号
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エルダー3 そして第三は、年上の部下に対しても遠慮することなく、あるいは逆に攻撃的になることもなく、率直に上司としての考えを伝えられるように、アサーションスキル※1を身につける研修を行います。―シニア期のキャリアデザインにおいて重要なことや、準備しておくべきことについてお聞かせください。山﨑 私が副理事長を務めている日本人材マネジメント協会では、2011(平成23)年にシニア期に必要な「プラットフォーム能力」という新しい概念を提言しました。 キャリア形成において若年時代は、社会や組織のなかで仕事を進めていくために「基本型」(仕事に向かう基本姿勢や段取り、他者とのかかわり方など)を習得します。次にミドル期には、「基本型」を土台としながら自分なりの経験から学習した「自分型」が加わります。その後シニア期になると、定年や役職定年などを契機に、新たな配属先や勤務先のニーズに応じた「市場型」へと、「基本型」と「自分型」をつくり変える必要があります。それは、これまで積み上げてきた「型」を、技術や能力の労働市場における希少性や汎用性といった価値に照らして再評価するという意味を持ち、これを「市場型」へのキャリア・シフトチェンジと呼びます。 このキャリア・シフトチェンジは、長い時間をかけて築いてきた「基本型」と「自分型」を一度崩して、労働市場で通用する「市場型」に組み替える作業であるため、大きな葛藤が生じます。この葛藤を乗り超え、自分の居場所を自分でつくり出していくための基礎能力がプラットフォーム能力です。―それはどのような能力ですか。山﨑 大きく三つに分類しています。環境が変化した事実を受け入れ、自分の立ち位置を客観的にとらえて、自発的に環境に適応した価値をつくり出していく「わたし創造力」、新しい環境での人間関係を構築する「お仲間め、シニア社員とともに、ジョブディスクリプション(担当する業務内容を明確化した職務記述書)を書き出します。 先ほど、再雇用後に人事評価の対象から外れるような制度に疑問を投げかけました。そうした制度は、年下の上司が年上の部下を評価しづらいという声が現場からあがることも一つの理由となっていますが、職務記述書があれば、そこに書かれている職務の期待値を達成できたかどうかが客観的に測定できるので、そのような心配は軽減されるはずです。キャリア・シフトチェンジを成功させるには自発的に準備する姿勢を持つのがポイント※1 アサーションスキル…… 相手に不快な思いをさせず、適切に自己主張するためのコミュニケーションスキルのこと

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