エルダー2020年11月号
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2020.1150はじめに1新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の流行拡大を受けて、各事業場では「新しい生活様式」に合わせたさまざまな対策や対応が求められています。ウイルスに接する可能性を小さくするために時差出勤や在宅勤務を中心とするテレワーク、いわゆる三密を避けるような職場環境の整備といった感染防止対策を行う職場が増えました。その結果、これまでとは異なる業務環境に置かれ、流行の終息が見えないなかでさまざまなストレスを感じている人が多いようです。一方、新型コロナでは高齢者に重症化のリスクがあることが明らかにされています。そこで「高齢社員への対応」を念頭に、職場で共有すべき新型コロナに関する基本的な事柄に触れたうえで、職場で実践可能な健康管理やメンタルヘルスに関する対策について解説します。知っておきたい新型コロナの基礎知識2新型コロナに関して、テレビ、新聞、インターネットを介して、膨大なニュースが報じられてきました。しかし、対策を行う際に必要な基本的な事柄は強調されていません。高齢社員への対策を考える前にざっとおさらいしておきましょう。①症状のない人からも新型コロナはうつる!覚えておきたい新型コロナの特徴は、人体にウイルスが侵入する「感染」と、発熱や咳などを生じる「発病」がイコールではない点です。2002(平成14)年から2003年に中国広かん東とん省、香港、アジアやカナダで流行した重症急性呼吸器症候群(SサーズARS)や2012年にアラビア半島から発生し、2015年に韓国でも流行した中東呼吸器症候群(MマーズERS)も当時の新型コロナでした。ともに感染すると発病し、重症化する確率が高いことが知られていました。ところが、2019(令和元)年より中国湖こ北ほく省武ぶ漢かん市から流行が始まった新型コロナでは、ウイルスに感染しても発病しない人がたくさんいることがわかってきました。その数は感染が確認された人の10倍から20倍にもおよぶとする説もあります※1。仮に東京都で〝本日は100人の感染者が報株式会社健康企業 代表・医師 亀田 高志特別寄稿2高齢社員に対する新型コロナ対策※1  Seroprevalence of SARS-CoV-2‒Specific Antibodies Among Adults in Los Angeles County, California, on April 10-11, 2020 Neeraj Sood, PhD; Paul Simon, MD; Peggy Ebner, BA; et al., JAMA. 2020;323(23):2425-2427. doi:10.1001/jama.2020.8279 (JAMA Network, Research Letter, May 18, 2020) https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766367 など 新型コロナウイルス感染症により、私たちの仕事や生活は、かつてないほどの変化が求められることになりました。特に、高齢者が感染した場合は、重症化のリスクが高まることが指摘されていることから、高齢社員が働く職場では、徹底した感染防止対策が欠かせません。そこで本稿では、亀田高志先生に、現在判明している新型コロナウイルスの実態とともに、高齢社員をはじめとした職場における感染防止対策について解説していただきました(編集部)。

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