エルダー2020年11月号
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2020.1152どがひっ迫し、発熱が続いてもなかなかPCR検査を実施してもらえない人が多数出てしまいました。各方面の努力によって、PCR検査の能力は拡充され、夏以降は病院やクリニックの医師の判断でPCR検査を受けやすくはなっています。しかし、この秋冬には再び新型コロナの流行が拡大して、症状があるのにPCR検査を受けられない人が増えるかもしれません。季節性のインフルエンザではクリニックや病院の外来での迅速検査でA型、B型の判定を簡便に受けることができます。同じように新型コロナでも抗原検査※5という方法が使えるようになってきました。ただし、この抗原検査でも感度はPCR検査と同等かそれに若干劣るレベルです※6。新型コロナに感染すると、これに対する抗体と呼ばれるたんぱく質をつくり、ウイルスを排除します。新型コロナの場合にはこの抗体は数カ月で消えてしまう可能性がありますが、血液検査でこの有無を調べることができます。一方、PCR検査や抗原検査で調べるのは、その検査を行った時点での感染の有無にすぎず、鼻の奥や喉、唾液から検体を採取した際の感染を調べているにすぎません。「陰性=感染が確認されなかった」としても、翌日から数日後、次の週以降も感染していない保証はありません。また、抗体検査も、比較的最近に感染したことを意味しているにすぎず、抗体があるから二度と感染しないという根拠もいまのところありません。④新型コロナのワクチンも特効薬も先のこと本稿執筆時点(9月中旬)で新型コロナウイルス感染症の患者数は世界で約3千万人、死亡した人は約93万人に及び、国内でも患者数約7万6千人、死者1400人を超えています。甚大な影響を与えている新型コロナに対して、重症化の防止に役立つワクチンの開発が進んでいます。また、即効性のある特効薬にも期待が集まっています。ワクチンに関して日本政府が欧米製薬企業と供給の契約を結んだという報道もあり、そのうち打てるだろうと楽観的に見ている人もいるでしょう。しかしながら、ワクチン開発では接種後に新型コロナに罹りにくく、重症者も減り、死亡する確率も小さくなった効果が証明されなければなりません。また、健常な人に打つのですから、重大な副作用が1万人に1件しかなくても許容できません。日本で仮に5千万人がワクチンを接種した後に5千人もの人に被害が出るなら、そのワクチンを使用できないからです。マスメディアの報道はその意図から楽観的になりがちですが、接種後の長期間の効果と安全性の確認を経て、量産して流通させ、国民全体が医療機関で接種してもらえるのは、早くとも2021年後半から末以降と考えています。新型コロナ対策の実践3以上の事柄を各職場で経営者や責任者、担当者からすべての社員にぜひ、共有してください。そのうえで対策を行う目的を 「社員の感染と重症化を防ぐこと」であると明示し、周知していただきたいと思います。さらに〝だれもが感染する可能性があること〞を常識として、「患者となった人も受け入れ、支援すること」を発信し、そのうえで「新型コロナによる事業への影響を最小化する方針」を改めて示すのがよいと思います。①社員の感染のリスクを最小化すること新型コロナに罹った人の多くは〝どこでだれからウイルスをもらったか、覚えがない〞といいます。症状がない人や発病する前でもうつしてしまうのですから、致し方ないことでしょう。ワクチンも特効薬も使うことができないのですから、感染する可能性を徹底して小さくすることに努めるのが最良の手段です。例えば、満員電車やバスに乗らなくても済むように時差通※5 抗原検査…… その時点の感染の有無を調べる、ウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検知する検査方法。過去の感染歴を確認する、抗原を除去する免疫反応でつくられた「抗体」を検出する「抗体検査」もある※6 厚生労働省『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第3版(9月4日)』 3. 症例定義・診断・届出 2. 病原体診断 2. 抗原検査

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