エルダー2020年11月号
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2020.1154つけ医を持つように指導してください。かかりつけ医に生活習慣病などに対して経過観察や必要な治療を行ってもらい、重症化のリスクを軽減しておくよう努めるのです。万が一、発熱などの症状が出た際には、落ち着いてかかりつけ医に電話で相談する流れを徹底しましょう。そして新型コロナと同時期に流行が懸念されるのは季節性のインフルエンザです。症状だけでは新型コロナとの区別がつきづらいことから、インフルエンザへの予防接種を奨励してください。かかりつけ医がワクチンを手配し、接種してくれると思います。65歳以上や65歳未満でも持病がある場合の優先的な予防接種が、厚生労働省や各自治体で計画されています。なお、かかりつけ医は、8月末に厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」のなかでも、その体制整備が強調されています。④高齢社員ごとのリスク評価を行う長年の生活習慣の積み重ねや加齢現象によって、高齢になるとがんや脳卒中、心臓病などの病気を持ちながら働く人が増えてきます。感染した場合の重症化やその後の後遺症のリスクを最小化するには、個々の高齢社員の状態を評価し、特に流行が拡大する時期には、その結果に応じた働き方を柔軟に進めていくことが必要です。ハイリスクであれば、流行拡大時期には在宅勤務中心に切り替え、あるいは時差出勤を活用し、可能なかぎり出張を控えるのです。その際には、本人の同意を前提として、かかりつけ医やがんなどを治療し経過観察を受ける主治医、あるいは産業医や保健師、看護師に相談ができるのであれば、高齢社員ごとのリスク評価を実施してもらいましょう。一方、その結果に応じて高齢社員に「不利益な取扱いを行わない」ことを経営者、責任者、担当者として徹底することは、個人情報保護法や厚生労働省が進める健康情報管理を遵守することにも通じます。なお、医師などの専門家の間では新型コロナへの感染を恐れるあまり持病が悪化したり、それでも医療につながらなかったりするケースが懸念されています。こうした「受診控え」をしないように、特に高齢社員に徹底していただきたいと思います。⑤高齢社員も含むメンタルヘルス対策の充実新型コロナの流行にともない、〝コロナ禍か〞と呼ばれるストレスを助長する環境に多くの働く人が曝さらされています。具体的には、図表1のような状況が該当します。現実的には重症化した職場の仲間や家族の死亡といった厳しい現実に直面してしまうケースもあります。大切な人との死別は強烈なストレス要因となり得ます。これらを解消する絶対確実な処方箋はありませんが、経営者、責任者、担当者として、図表2の事項をできるだけ実践することは、高齢社員を含む働く人には有益であろうと思います。※筆者作成※筆者作成図表1  新型コロナによるストレス要因図表2  新型コロナによるストレス軽減のための処方箋◉ 在宅勤務のような新しい働き方に適応し難い◉ 目を背けてきた個人的な問題に直面する◉ 将来的な雇用や所得等の社会経済面の不安◉ 自由に楽しめてきた娯楽などを奪われた感覚◉ 上司・部下や同僚との関係性の予想外の変化◉ 新型コロナの終息が見えないことへの不安◉ 自身や家族の感染という漠然とした不安◉ 感染した場合の誹謗中傷を受ける恐れ① 雇用や処遇を可能なかぎり維持すると明言する② 専門家などとともに不安や困りごとの相談にのる③ 困難な事態も学びの機会ととらえるよう努める

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