エルダー2020年11月号
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2020.114アテナHROD 代表・特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会 副理事長山﨑京子さん構築力」、だれにも頼らず一人で仕事を完結できる「おひとりさま仕事力」の三つです。それぞれについて、より具体的に全部で16の能力要素を体系化しています。 これに基づいて、中央職業能力開発協会※2にご協力いただき、プラットフォーム能力を自己評価するパッケージを開発し、シニアのキャリア・シフトチェンジのワークショップを展開しています。ワークショップでは、認定インストラクターのもとで自己診断ツールや事例検討、行動計画シートの作成などを行い、キャリア開発への自覚をうながします。―ワークショップに参加する機会のない人はどうすればよいでしょうか。山﨑 自分の能力を「市場型」に再構築するキャリア・シフトチェンジが必要という認識を持ち、自覚的に自ら情報を取りに行く姿勢があれば、現代はインターネットなどで多くの情報にアクセスできるインフラが整っていますから、自ら一歩ふみ出したことになります。キャリア・シフトチェンジは、他人に指示されてやるのではなく、自ら気づいて自発的に準備する姿勢を持つことが最大のポイントです。―高年齢者雇用安定法の改正により、来年4月から70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務となります。この施策に対するお考えをお聞かせください。山﨑 これまでの日本の正社員の雇用システムは、内部労働市場※3を前提とし、職務を限定しないメンバーシップ型が主流でしたが、近年はまず職務の内容や範囲を定義し、それに人を割りあてるジョブ型への移行が関心を集めるようになりました。ジョブ型がうまく機能する条件は、職務を中心に採用・配置が行われ、外部労働市場※4での人の流動性が高まることです。 今回の法改正で導入された就業機会の確保措置は、従来の雇用確保措置の内容に加え、ほかの事業主による雇用、業務委託契約、社会貢献事業での就労という、外部労働市場の活性化をうながす施策が盛り込まれた点が評価できます。 私は、内部か外部かの二者択一ではなく、両者のハイブリッドで働き方の選択肢が増えるのはよいことだと考えます。多様な働き方を選べる条件が充実すれば、自律的なキャリアデザインに向けたシニアの意識が高まります。―超高齢社会の到来は、日本の雇用システムの再構築をうながしますね。山﨑 高齢化は日本だけの現象ではありません。内閣府の『平成30年版高齢社会白書』によれば、2060年には中国、シンガポール、タイ、韓国といったアジア諸国が、現在の日本の推定高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)の約30%を越してきます。これは、これからの日本の対応がアジア諸国のロールモデルになることを意味します。多様な働き方を選択できる制度設計と、シニア自身の自律的なキャリアデザインという二つの流れを軸とした日本の取組みがうまく機能することで、日本の成熟したシニアのキャリア・モデルをアジア諸国に提示できることを期待しています。多様な働き方が選べるようになればキャリアデザインに向けた意識も高まる(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博)※2 中央職業能力開発協会……https://www.javada.or.jp/shift/index.html※3 内部労働市場……企業内部の配置転換や昇進など、企業組織を単位として形成される労働市場のこと※4 外部労働市場……内部労働市場に対して、企業横断的に労働力の需給調整が行われる通常の労働市場のこと

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