エルダー2020年12月号
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2020.1210の副業のイメージは「空き時間を利用した」、「未経験でもできる」といった片手間感の強いものでした。しかし、コロナ禍以降のシニアの副業ニーズは、「本気」の副業とでもいうような、本業も責任ある立場で注力したうえで、本業と同等に力を注ぐ副業に注目が集まっています。例えば、自身も事業を運営する経営者が、本業以外での収益を強化するために副業を探すケース、自身はフルタイムで働きたいが職場の規定で数日しか働けず、空いている日に違う仕事をしたいといったケースです。起業でも副業でも、シニアの動機は「お小遣い稼ぎ」や「好きなことをやりたい」というものではなく、もっとキャリアや収入を強く意識したものとなっており、業務委託や副業を希望するシニアにも強い積極性と専門スキルを持った人材が多いことがわかります。高齢法の改正でシニア就労はどう変わる?ご存知の通り、来年4月には改正高齢法が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となります。しかし、努力義務であり、すべての企業が「70歳まで雇用し続ける」状況になるには、残念ながら時間がかかりそうです。そうしたなかでもシニア側の意識は確実に、70歳まで働くことがあたり前だと感じるように変わっていくのではないでしょうか。70歳まで働き続けられない職場からは、働き続けたいシニアが流出します。70歳まで働き続けたいシニアやよりよい条件を求めるシニアが、対応しきれない企業から流出することで、シニアの転職市場はさらに活性化するでしょう。改正高齢法では65歳から70歳までの働き方として、企業が自社で雇用し続けないフリーランスや起業などのパターンも示していますが、シニア自身の希望だけで選べるものではなく、企業がそのための制度を設ける必要があります。このことも「理想の老後の働き方」ではない企業からのシニアの流出につながります。こうした「理想の老後の働き方で会社を選ぶ」動きは、やがてシニアにとどまらず、若者を含めた全年齢に広がると思われます。企業はシニアの採用のみならず、若い世代も含めた採用全般を円滑に行うために「魅力ある老後の働き方」を早急に整備する必要があるでしょう。年齢だけでは人材を評価できない時代へ終身雇用からの脱却を目ざす日本企業が、「魅力ある老後の働き方」を整備し、訴求しなければならないのは皮肉な話で、また、いままで考えたこともないような、シニア人材のフリーランス化や起業の支援についても考えを巡らせなければならず、企業の人事は大きな混乱のなかにあることでしょう。おそらく来年4月の改正高齢法施行以降も企業の試行錯誤は続き、4月までに改定した社内規定も短期間でつくり直されるかもしれません。しかし、その間にも先行する企業はシニアを採用し続け、そうした企業を目ざしたシニアの転職も増えるでしょう。くり返しますが、すでに50代と60代の評価の差は、かなり縮まっています。もはや年齢・世代だけで、低い評価や安い労働力と考える時代ではありません。個々のシニアの経歴・スキルを評価し、シニアを適切に活用する制度づくりがいま、企業に求められています。イノベーションのにない手は特殊なシニアではありません。シニアの活躍の場をつくることで、イノベーションもまたそこから生まれてくることでしょう。なかじま・やすよし 株式会社シニアジョブ代表取締役。1991(平成3)年、茨城県生まれ。大学四年時に仲間を募り起業、翌2014年の卒業後にIT会社を登記。シニア転職のむずかしさに衝撃を受け、シニア支援に一生を賭けることを決意。2016年に社名変更した株式会社シニアジョブは、50代以上に特化した人材紹介、人材派遣を提供する会社で、1000人以上のシニアの転職を支援。

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