エルダー2020年12月号
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特集シニア採用で会社にイノベーションをエルダー11シニアと企業のマッチングの必要性高齢者の就業率と医療費の関係を都道府県別に見てみると、高齢者の就業率が高く、シニアが長く働いている都道府県ほど、医療費が少ないことがわかります※1。やはり、長く働いてもらうことは大事で、働くことで健康が増進され、健康寿命が延びて、医療費が下がるわけです。働くことは、三つの面でシニアの健康維持に寄与します。まず、働くと「頭を使う」。認知機能低下の防止にもなりますし、自分自身のキャリアを意識して築いていくことができます。次に「体を使う」。家から出て人と会ったり、毎日歩いたりして、身体の面で健康になります。そして「気を遣う」。これがすごく大事で、人に対して気を遣い、自分を律したり、社会性を保つことで、人はメンタル的に健全でいられます。シニアが働くメリットは、健康寿命が延びて個人が幸せになるだけではありません。企業は、人材不足のなかで戦力を獲得し、成長・発展することができます。社会全体を考えても、介護や医療の社会負担が抑えられますし、若者たちが未来に希望を持てます。そういう意味では、今回のテーマである「イノベーション」にかぎらず、もっとシニア採用のマッチングを進めていくことが大事です。イノベーションを起こせるシニア人材とはイノベーションにつながるシニア採用について考えていく前に、大前提として、みなさんに認識しておいていただきたいことがあります。それは、シニア層においても、イノベーションを起こせる人材として活躍している人はいますが、イノベーションを起こせるシニア人材のマッチングは決して簡単ではない、ということです。シニア人材は能力やキャリアはもちろん、働き方に対する意識も個人差が大きく、ミスマッチを起こさないためには、採用時の人材の見極めが重要となります。平成の時代をふり返ると、イノベーションこそが日本企業にとっての課題でした。日本のIMD※2世界競争力ランキング※3は、平成の初めには1位でしたが、平成が終わるころには20位を下回り、いまでは30位以下です。人口1人あたりのGDPを見ても、2002(平成14)年ごろまでは世界で10位以内だったのが、20位台半※1  厚生労働省『平成24年版 労働経済の分析』より※2 IMD……国際経営開発研究所(International Institute for Management Development)※3  世界競争力ランキング……IMDが公表している国ごとの競争力を示したランキングのこと。世界の主要60カ国・地域を対象に、企業にとってビジネスしやすい環境がどれほど整っているかを基準に順位づけされるシニア採用におけるミスマッチの防止に向けて株式会社クオリティ・オブ・ライフ 代表取締役 原 正まさ紀のり

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