エルダー2020年12月号
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2020.1212ばまで順位を下げました。企業の時価総額ランキングも、1989年には世界ベスト50に日本企業が32社も入っていたのに、いまではトヨタ自動車1社のみです。なぜそうなったかというと、イノベーションを起こせなかったからです。諸外国の企業が多くのイノベーションを起こし、生産性やビジネスモデルを革新してきたなか、日本企業のなかには、改善こそしてきたものの、変化に対応しきれなかった企業も少なくありません。その中心にいたのが、現在のシニア世代であることを無視することはできないでしょう。もちろん、シニアのなかにもイノベーションを起こせる人材はいます。現役時代から経営能力や専門性や感性を高めてきた人材、あるいは、社内外に幅広くプロフェッショナル人材のネットワークを持つ人材です。後者は、自分一人でイノベーションを起こすことはできなくても、ネットワークをコーディネートしてイノベーションを起こせる可能性があります。ネットワークは、シニアの大きな強みです。また、イノベーションに重要なアイデアや創造性は、実は天才的なひらめきというより、それまでの経験や知識や情報が組み合わされて出てくることが多いものです。情報や経験が多いほどアイデアを出せる可能性が高いので、そういう変換力のあるシニアは、イノベーションを起こせる可能性があります。反面、シニアの課題として、柔軟な発想や創造性が不足しがちな傾向があるのも事実です。ステレオタイプな考えになり、新しいものに対する好奇心や、それを身につける努力が欠ける傾向があります。インターネットをはじめとするデジタル対応はその最たるものです。イノベーティブなシニア人材を採用したいのであれば、キャリア・経験だけでなく、その人がどういう意識を持っているかも見極めて、ミスマッチを防止する必要があります。企業が活かすべきシニア人材これからの企業が活かすべきシニア人材は、大きく二つあります。一つは、管理系または専門系の能力、経験、ネットワークを有する人材です。このようなシニアは、イノベーションが期待できる人材です。もう一つは、ビルの管理、清掃、警備、介護、接客サービスなど、人手不足の傾向にある仕事をになえる人材です。現状働いているシニアは後者が圧倒的に多く、シルバー人材センターがになっている業務やハローワークで求人が出るのもほぼこちらです。もちろんこれも社会を支える大事な仕事ですので、そこをシニアにになってもらうこともシニア人材活用の一つです。このように、企業によってシニア人材の活用方法は異なります。一方、世界の労働者をハイスキル、ミドルスキル、ロースキルに分け、雇用の喪失がどのゾーンで起きているかを調べてみると、世界中で、圧倒的にミドルスキルの労働者の雇用喪失が起こり、機械やAIなど新しい仕組みに置き換わるか、無用の作業としてリストラクチャリング※4されていっています。そうしたミドルスキル人材も、中小企業の管理職などに活用の余地はありますが、今後は減少していくことが予想されます。なお、ここで一つ問題提起したいことがあります。それは、そもそもイノベーションとは何かということです。グーグルやアマゾンがやってきたような、物事をがらっと変え、社会に影響を及ぼす革命的なイノベーションばかりでなく、中小企業などが身の周りの事業でちょっとした新しいことを生み出すのも、イノベーションと考えられないでしょうか。緩やかだけれど確実に変わっていく、改善に近いソフトなイノベーションです。例えば、株式会社モスフードサービスは、シニアを積極採用して店舗運営に活用し、成果を上げました。「モスジーバー」と呼ばれる取組みです。こうしたものもイノ※4 リストラクチャリング……収益構造の改善を図るために事業を再構築すること

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