エルダー2020年12月号
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特集シニア採用で会社にイノベーションをエルダー25トツールも用いて随時やり取りをする。毎月のミーティングの内容は、報告書として社長に上げる。だれがどんなことで悩んでいるか、それに対してどう指導したかを社長が把握し、対処すべき課題があれば、営業や人事に指示したり、客先と交渉したりして問題解決を図る。コーチは、現場の課題を吸い上げて経営に伝える役割もになっているのだ。コーチの契約形態は業務委託契約。人生経験、業界経験、マネジメント経験があるシニアを募集し、澤田社長が自ら選考する。「応募者のなかには、正直、ふんぞり返って来る人もいます。そうではなく、若い人と正面から向き合い、腹を割って話し、ダメなときは本気で叱ってくれる人、愛情をもって信頼関係を築く人間力のある人を求めています。この業界では、客先に常駐するエンジニアを放ったらかしにする傾向があり、それをどうにかしたいという思いに共感してくれていることも大事です。また、ねらっているわけではありませんが、それなりの規模の仕事をしてきた人が選ばれており、結果的に多くの方が大手企業出身です」と澤田社長はいう。現在は20数人のコーチが活躍しており、そのうち3人が女性。1年ごとの契約更新で、上限年齢は定めていない。最年少者は大手企業を早期退職した58歳、最年長者は76歳である。出勤日数は週1〜3日程度。1人1時間ずつ、1日に3人前後と面談をする。1日に面談できるのが3人くらいなので、各コーチが受け持つ社員の人数は、12人(3人×4週)×出勤日数を目安としている。「おせっかい」なコーチ陣がエンジニアの成長を本気で後押しコーチとして活躍する榎えのき恒つね久ひささんは64歳。大学を卒業後、大手電機メーカーにSEとして入社し、57歳まで勤め上げた後、ソフトウェア開発会社で役員を務めた。60歳で引退したが、「暇にしていると自分の脳にもよくない」と、61歳のときに新聞広告を見て同社に応募した。当時はコーチと営業支援の2職種でシニア人材を募集しており、当初、榎さんは営業支援として契約した。しかし、榎さんが社員たちとやり取りする姿勢を見た澤田社長が、「営業支援だけではもったいない」とコーチを依頼した。いまは週3日出社し、38人の社員を受け持っている。新人コーチが入ってきたときに指導するリーダーの一人でもある。「初めは12人を担当し、週1回出社して1日3人と面談をしていました。面談の準備として、事前に本人とやり取りをし、進捗状況を把握しておかなければなりません。そして、コメントを返しておいたうえで面談に臨みます。その後は、結果を社長に報告し、面談で約束したことをしっかりと行っているか追いかけます。私は物事がきちんと回っていないと気に入らない性分なので、何度もメールでやり取りします。やり始めたら、思いのほかやることがたくさんありました(笑)。でも、楽しいですよ。いろいろな人がいて、現場での悩みなどを話してくれて、それにアドバイスすることで、社会との接点を保つことができ、自分自身の活性化にもなっています」と榎さんはいう。数多くのプロジェクトで責任者などを経験してきた榎さんは、社員の話を聞けば、「いま、澤田敏社長(左)とコーチの榎恒久さん(右)

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