エルダー2020年12月号
30/68

2020.1228を積極的に募集・採用している。当時はいまほど高齢者雇用が活発でなかったため、求人にあたり、地域のシニアに関心を持ってもらえるよう、同社はポスターやチラシに工夫を凝らし、次の言葉を記してシニア人材を募った。『あたらしいことのチャレンジは若者だけの特権ではありません。サラダコスモは世代、性別を問わず、若いこころに乾杯したい』『シニアのパートさんを募集します。シニアとわざわざ強調するのは、新しい挑戦には豊かな経験こそ、なにものにも代えがたい宝物という思いからです。サラダコスモにはあなたの経験をいかしていただける、たくさんの仕事があります』現在、「ちこり村」で働く60歳以上の57人を年齢階級別にみると、60〜64歳が11人、65〜69歳が13人、70歳以上が33人。オープン時に60歳以上で入社し、勤務を続けている人もいる。「定年制はなく、勤務時間や日数は各部門の上司が本人と面談して、8時から17時までの間で個別に決めています」(川口部長)それぞれの事情や体力などに応じて無理なく働き続けられるよう、65歳以降は短時間・短日勤務で、ゆるやかな働き方をしている人が多い。シニア従業員が活躍しているのは、チコリの生産ファーム、チコリでつくる焼酎蔵、マルシェ(野菜・土産物販売、カフェスタンド、パン工房)、工場見学ツアーのガイド、地元産の野菜を中心にした手作り家庭料理のレストランなど幅広い。コロナ禍の現在、工場見学やイベントの開催は中止しているが、以前は大型バスで訪れる団体の観光客なども多く、地元住民にも人気の施設として、来場者数は開村5年目(2011年)で年間約26万3千人、直近の2019年では約31万3千人と伸びて、地域活性化に大きな貢献を果たしている。その要となっているのが、シニア従業員である。「前職での知識や経験などを活かし、活き活きと働いています。シニア従業員の活躍なしに、この会社は存在しないと思います」とサラダコスモの従業員は口を揃えるようにしてシニア従業員の活躍に敬意を表す。異なる経験と技術をそれぞれが自ら発揮若い従業員との交流も楽しむ「ちこり村」で働く小倉義よし朗ろうさん(81歳)と大橋辰たつ昭あきさん(80歳)、石原良りょう一いちさん(71歳)は、オリジナル焼酎の製造・販売・接客を、上司の豊岡聖まさ之ゆき蔵長のもとで担当している。「ちこり村」では3R(リデュース・リユース・リサイクル)に挑戦しており、収穫後のチコリの根(通称・チコリ芋)を活用した焼酎づくりを行っている。原料となるチコリ芋の選別をはじめ、かめ壺での仕込み、発酵管理などの製造からビン詰め、ラベル貼り、箱入れ、販売・接客まですべての工程を行っている。小倉さんは、工業高校で38年間教諭を務めて60歳で定年後、ほかの高校で非常勤講師を務め、65歳のときに同社に入社。以来、前職とはまったく異なるこの仕事に好奇心をもって取り組み、「ちこり村」でも「小倉先生」と親しまれて呼ばれ、頼りにされている。「初めて焼酎づくりと出会い、麹こうじからモロミとなり、発酵して焼酎ができあがっていく過程に感動しました。夢中で取り組んでいるうち15年が経ちましたが、興味は尽きません。ここでは製造から販売、接客まで交代で担当するので、豊岡蔵長の指示のもと、的確に仕事をすることに努めています」(小倉さん)大橋さんと石原さんは、同じ大手電機メーカーで定年まで勤めた。大橋さんはその後、地域の役員などを務めるなか、65歳で「ちこり村」の求人に応募。かつて石垣島の焼酎蔵を見学したことがあり、焼酎づくりに興味を持っていたことが動機だったという。「チコリ芋の選別からすべての工程にたずさわるので、売れたときの喜びはひとしおです」(大橋さん)

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る