エルダー2020年12月号
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エルダー37つまり短期雇用型社員の特性に対応するには、賃金は仕事の重要度によって決める必要があります。これが「仕事原則」です。制約社員の特性に対応するには、働き方の制約化にともなう労働給付能力レベルの低下に合わせて賃金を調整する必要があります。これが「制約配慮原則」です。なお第3回の「賃金決定の基礎理論」のなかで説明したように、労働給付能力レベルとは業務ニーズに合わせて働ける能力のレベルを示しており、それが高いほど会社にとって価値の大きい(したがって、賃金の高い)社員になります。また労働給付能力レベルの低下に合わせて調整される賃金部分は、第5回で説明したリスク・プレミアム手当にあたります。ここまで準備すれば、高齢社員の賃金制度を合理的に設計することはむずかしいことではありません。それを示したのが図表です。高齢社員の賃金制度の設計2■正社員が成果主義型賃金の場合まず、定年前の正社員の賃金が①成果主義型賃金をとっている場合を考えてみます。ここでは定年時の賃金は成果、つまり仕事の重要度に見合って決められているので、塗りつぶし部分で示してある賃金のすべてが「仕事に対応する賃金部分」と等しくなります。この賃金が、定年して高齢社員になると、どう変わるのかを考えてみます。まず高齢社員の仕事が定年前とまったく変わらないとします。これは図表の〔現職継続の場合〕にあたります。高齢社員の賃金は「仕事原則」にしたがうと定年前と同じ水準になりますが、「制約配慮原則」を考慮する必要があります。つまり定年を契機に制約社員に転換するので、高齢社員の賃金は「制約配慮原則」に基づいて労働給付能力レベルの低下に見合った分(図表の「制約化部分」に対応します)だけ低くする必要があります。したがって、高齢社員の賃金は図表に示してあるように「定年前賃金-制約化部分」になります。しかし現状をみると、この〔現職継続の場合〕は少なく、多くの高齢社員は定年前と同じ分野の仕事に就いたとしても職責が低下する〔仕事が変わる場合〕にあたります。この場合には仕事の重要度が低下するので、高齢社員の賃金は「仕事原則」にしたがって、その低下に合わせて低下することになり、それを図表では「仕事変化部分」としています。さらに〔現職継続の場合〕と同様に「制約配慮原則」が適用されるので、高齢社員の賃金は「定年前賃金-制約化部分-※筆者作成図表 高齢社員の賃金の決め方の概念図【現職継続の場合】後払い部分後払い部分制約化部分後払い部分仕事に対応する賃金部分仕事変化部分制約化部分仕事に対応する賃金部分①成果主義型賃金高齢社員の賃金②年功賃金定年前賃金【仕事が変わる場合】定年前賃金=賃金高齢社員の

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