エルダー2020年12月号
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ので、不利益緩和措置は紛争予防の観点からも重要な取組みといえるでしょう。なお、ほかの裁判例においては、特定の属性(例えば、年齢が○歳以上など)をねらい撃ちして不利益を課すような人事制度の見直定年後再雇用の限界について1高年齢者雇用安定法に基づき、65歳までの継続雇用制度が多くの企業において採用されています。また、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会の確保がうたわれています。実際に労働可能な年齢も徐々にしに対しては、その変更の合理性を否定した裁判例もありますので、不利益を受けることになる労働者の洗い出しやその対象者の属性に一定の傾向がないかという点についても、注意しておくべきでしょう。上昇しており、65歳以上の労働者を雇用し続けている企業も増加傾向にあるといえるでしょう。一方で、60歳の定年制を超えて、65歳以上の年齢をもってあらためて定年制を設定しているような企業は少なく、継続雇用制度を何歳まで実施していくのかという点については、就業規則にも定めていない企業もあるでしょう。しかしながら、労働者の健康状態と求められる業務内容などをふまえて、一定の限度を設定することや、継続雇用の基準の設定を検討することも必要でしょう。その場合、就業規則を変更し、当該基準に照らして、継続雇用の基準を満たさなかった場合には、労働契約の終了につながることになりますが、65歳以上であれば、継続雇用を終了させることが当然に許されるというわけではありません。継続雇用の終了と労働契約法第19条260歳以上の労働者との間で継続雇用を行っている場合、多くの企業では、1年単位などで有期労働契約を締結しているでしょう。労働契約法第19条は、①反復更新されたもので、当該契約の終了が解雇の意思表示と社会通念上同視できる場合、または、②更新されるものと期待することについて合理性がある場合のいずれかに該当する場合には、契約の不更新が客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前の労働条件と同一の労働条件による労働契約が維持されることが定められています。また、有期雇用ではなく、期間の定めのない雇用として労働契約を継続していれば、労働契約を終了させる場合には、労働契約法第変更時に雇止めの対象となる労働者がいる場合には、就業規則の不利益変更の有効性について紛争が生じるおそれがあります。また、労働契約終了の有効性については、高齢者であっても労働契約法により制限されることにも留意する必要があります。就業規則の改正においても、不利益を受ける労働者へのていねいな説明、または経過措置による不利益の緩和などが重要と考えられます。A2020.1244定年後再雇用制度を改定する際の留意点について知りたい定年後再雇用の対象労働者について、65歳を超えて継続して雇用しています。このたび、就業規則を変更して、65歳以降の継続雇用については、一定の基準を設けるほか、上限年齢を設定することを検討していますが、何か問題があるでしょうか。Q2

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