エルダー2020年12月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー47釈のある用語ですが、人事では〝組織の責任者(組織長)〞ととらえて間違いはありません。例えば、組織図上の部組織の長は役職では部長となります。組織長は1名でないと指揮命令系統(「レポートライン」とも呼びます)が混乱するため、部長も1名となります。ところが、ポストにはかぎりがあります。だれかが組織長になるとしばらくはほかの社員が昇進できず、報酬も上がらないという現象が起きます。そこで、図表のように部長と同格だが、組織長でない「担当部長」という役職を置いて処遇することがあります。組織長ではないが、部長並みに重要な役割をになう役職です。この場合は部長も担当部長も同格(同じ難易度の役割をになう)であることを示すために、等級というレベルを示す区分が必要となります。また、役職者未満(図表では「一般職」)であっても、だれが組織長の候補者としてのレベルに達しているかを判断するために、等級による区分が必要です。図表の場合、課長の候補者となり得るのは5等級に配置されている人材ということになります。このように、実際の役割に則しているのは役職ですが、その役職の就任に該当するレベルの人材を同等級に配置したほうが、機動的に運用できるという理由から、等級・役職、昇格・昇進は分離することになります。「管理職」と「管理監督者」は異なる課長・部長などの組織長への昇進、もしくは対応する等級に昇格すると「管理職」と呼ぶ会社が多くあります。文字通り組織を管理する立場になるため、このように呼んだりするのですが、労働基準法第41条の「管理監督者」とは異なるという点に注意が必要です。この二つも昇格・昇進並みに混同されて使われているため、本稿で触れておきます。厚生労働省の『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』(2008年)というパンフレットには、「『管理監督者』は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。『管理監督者』に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します」とあります。管理職と呼んでいる役職者には、要件を満たしていないにもかかわらず、管理監督者とみなして時間外手当や休日出勤手当を支給しないケースも見られます。真に管理監督者であれば支給対象外ですが、そもそも管理職が管理監督者に該当しないとなると「賃金未払い」の状態になるため注意が必要です。自社の管理職が管理監督者に該当するかどうか疑問に感じる場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。高齢者雇用と昇格・昇進昇格・昇進の話に戻ります。多くの会社では50〜55歳あたりで昇格・昇進がストップするのが一般的で、一定年齢に達すると役職から外れる「役職定年」を導入している会社もあります。少なくとも定年時には役職を外れたうえで、再雇用へと切り替えることがほとんどです。そのため、60歳以上の雇用については役職も昇格・昇進もない状態が多く見られます。しかし、本来は後進に道をゆずる意味も込めての措置でもあったところ、昨今の人手不足により代わりの人材がいないという事情もあります。また、今後の70歳までの長期雇用を見据えると、昇格・昇進と年齢を切り離して考えた方がむしろ現実的な対応となり、本人のモチベーションに寄与する可能性にも触れておきたいと思います。☆  ☆今回は「昇格・昇進」について解説しました。次回は、最近話題になることが増えている「諸手当」について取り上げる予定です。

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