エルダー2020年12月号
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2020.1250後は、会社へ戻って日報の作成・提出などを行い、それから帰宅するという流れが一般的だった。つまり、自宅と会社と現場を移動することにかなりの時間が費やされていた。この移動にかかる時間を短縮するために、横澤部長は建設現場の近くで休憩や昼食を取るために使用している現場事務所の活用を思いついた。現場事務所をサテライトオフィス化し、会社で行っている業務をそこでできるようにすれば、わざわざ会社に立ち寄る手間をなくすことができる。また、それを実現するには、会社にいなければできない業務を削減し、現場事務所でもできるようにする必要がある。そうすれば、介護・育児や病気・ケガなどで出勤できない事情があっても、在宅での勤務が可能になる。そこで、業務にかかわる書類をデジタル化して外部からもアクセスできるようにし、ノートパソコンを会社が社員に貸与するようにした。ただし、ノートパソコンは全社員に一律に貸与するのではなく、会社に寄与した割合の高い社員から優先して貸与するようにした。例えば、利益率の高さや、勉強会への出席率の高さなどである。そうすることで、社員が会社の方向性に意識を合わせることをうながしていった。向洋電機土木が導入したテレワークは、現在、各現場のサテライトオフィスと自宅で可能になっている。セキュリティ上、会社に許可されていない場所でのテレワークは認められていないが、サテライトオフィスはその現場を担当していない社員でも利用可能だ。テレワークは全社員が業務内容とその進捗に合わせて柔軟に利用することができる。したがって、なかにはテレワークの割合が多い社員もいれば、月0時間の社員もいる。同社は、さまざまなITツールを活用することによってテレワークを可能にし、業務の効率化を図っている。打ち合わせや会議は、インターネットによるビデオ会議ツールを活用することウェアラブルカメラを活用することでベテラン社員の現場チェックの負担を軽減で、離れていてもできるようにした。会議を開く場合、かつては全員が揃う日程を調整するのがたいへんだったり、会社に戻るのが遅れる社員がいれば到着するまでほかの社員が待つ必要があったりした。しかし、テレワークの導入以降は、会社に戻れない社員はサテライトオフィスや自宅からでも参加できるようになった。また、会議の録画を後から視聴することを可能にし、手間のかかる議事録や報告書などをなくした。社内では勉強会も活発に行われており、横澤部長が社員のニーズの高いテーマをあらかじめ複数ピックアップして開催しているが、これにもビデオ会議ツールが活用されている。また、社員が分散して働くテレワークでは、情報をいかに共有するかがより重要になる。同社では、オープンソースのSNSソフトを導入して社員間のコミュニケーションに活用。さらに、社員の間で技術を共有するために、社員が自由に書き込めるコラボレーションソフトを導入し、マニュアルや仕様書の作成・更新・共有に役立てている。若手社員が現場で作業状況のチェックを必要としたり、現場の施工に関する悩みを相談したい場合、以前はチェックを担当するベテラン社員が現場に行かなければならなかったため、必要なタイミングでのチェックや相談ができない横澤昌典CHO・広報部部長

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