エルダー2020年12月号
53/68

エルダー51えるだぁ最前線えるだぁ最前線という問題があった。そこで、ウェアラブルカメラを現場で働く社員のヘルメットなどに装着したり、タブレット端末を活用することで、会社や現場事務所などの離れた場所から動画でリアルタイムにチェックすることも行われている。テレワークの導入にあたっては、環境整備のための初期費用がかかるイメージがあるが、同社では無料のツールやサービスを活用して自前で環境を構築しており、経営資源のかぎられた中小企業でも取り組みやすくなっている。テレワークの導入は、現場の社員が会社に立ち寄る必要が減った分、残業代などコストの削減につながっている。テレワークのみの効果とはいい切れないものの、テレワークを開始したばかりの2008年度と2017年度を比較すると、社員は増えたにも関わらず、移動にかかる年間ガソリン消費量は3万4千ℓ→2万7545ℓ、会社の電力使用量は3万2千kwh→2万4938kwh、平均労働時間は2100時間→1800時間にそれぞれ削減されている。同社では、こうして浮いたコストをITツールの改善などに充てるとともに、労働時間の短業務の効率化で空いた時間をスキルアップに充て業績を向上縮で空いた時間を、1級電気工事施工管理技士など業務に関連する資格取得などのスキルアップに充てることを奨励している。社内で定期的に講習会を開催するなど、社員の学習を積極的にサポートしており、資格取得者が増加。社員のスキルアップの結果、入札できる案件も増え、売上げは2008年度の9億円から2017年度には18億円へと倍増している。さらに、テレワークの先進企業として有名になったことで、同社の求人には全国から数百名もの応募が集まるようにもなった。また、テレワークは高齢者にとっても働きやすい職場環境の実現にも寄与している。特にウェアラブルカメラの導入による遠隔での確認は、ベテラン社員が現場まで足を運ぶ負担の軽減につながっている。高齢者はテレワークなどの新しい働き方になじみにくいといわれるが、横澤部長は「テレワークが本人にとって有意義であることをきちんと説明し、理解してもらうことでクリアできます」と話す。当初、社内の業務内容を整理するうえで、横澤部長が特に課題と感じたのが仕事の教え方だった。ベテラン社員から若手社員への技術の継承は、高度な技術力を維持するうえで重要だが、同社では長年にわたり「仕事は見て覚えるもの」、「先輩のやり方を盗むもの」という慣習が根づいていたため、ベテラン社員は教えるスキルを身につけてこなかった。そこで横澤部長は、ベテラン社員に対して、自分の技術を伝承するスキルの必要性を訴えた。「教えるスキルを身につければ、高齢になって体力が衰えてきても活躍し続けることができます。そのため、『伝えるスキルとマニュアルをつくるスキルの両方を身につけて、それぞれのよさを活かして後輩に教えられるようになった方がいい』と説明しました。特にこれからのシニアになっても能力を発揮できるように教え方を身につけさせる現場の状況をタブレット端末を使って撮影し、会社・現場事務所などにいるベテラン社員と共有し、リアルタイムでサポートが可能となる

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る