エルダー2020年12月号
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エルダー57本間達哉 著/経団連出版/1400円+税弘ひろ兼かね憲けん史し 著/海かい竜りゅう社しゃ/1000円+税川かわ田だ知とも子こ、長谷川 聡さとし 著/弘文堂/2800円+税ここ数年、働き方を抜本的に見直すことを目的とした労働法の改正が相次いだ。さらに来年4月1日からは改正高年齢者雇用安定法が施行される。各事業所における適切な雇用管理のよりどころとなる労働法の知識をいま一度整理する、絶好のタイミングではないだろうか。労働法のテキストは数あるが、本書は、最近の雇用社会の変化を意識しながら、労働法の基礎をしっかりと学べるように企画されたテキストである。大学の講義での使用を目的にしているので、労働法の基本的なテーマや制度の仕組み、法律の制定や改正とその背景が平易な表現でまとめられている。そして、詳細な判例索引とともに、多くの裁判例もしっかりとフォローされており、職場でも話題となることが多いと思われる、最近のトピックについては、コラムという形で「在宅勤務」や「兼業」、「LGBT」、「ディーセント・ワーク」などが取り上げられているので、実務にも役立つ。法令改正に特化した解説書とは異なり、日々の実務に役立てるというわけにはいかないが、腰を据えて労働法と向き合い、人事労務担当者としての知識をワンランク深掘りしたい人にとって価値あるテキストになるだろう。著者の弘兼氏は1947(昭和22)年生まれ。大学卒業後、3年3カ月のサラリーマン生活を経てプロの漫画家となった。代表作「島耕作」シリーズは、サラリーマンを描いた漫画の代表であり、連載スタートの1983年から、いまなお絶大な支持を集めている。本書は、「まだまだやりたい仕事はたくさんある」という73歳現役の弘兼氏が、コロナ禍で変化を余儀なくされているライフスタイルをふまえつつ、人生後半の歩み方を家族や仕事、他人との関係などをテーマに綴ったエッセイ。「老ろう春しゅん時代」は著者が考えた「第2の青春」を表す言葉で、「セカンドキャリアの中で、変化を恐れず、なにかにチャレンジし、それを愉しむ。そして、新しい自分に出会う。それがあなたの『老春時代』です」と同世代へエールを贈る。「死ぬまで働く」ことは「死ぬまで誰かとの関係性を維持していく」こと、「どんな役職に就くか」よりも「どんな仕事をするか」が大切、人間関係では「立ち入り禁止地域」に注意……など、老春時代を「愉快に働く」ための11のポイントも示されている。セカンドキャリアの助走期間にある40代や50代の人にとっても、将来のヒントが得られる一冊になりそうだ。「1 on 1」(「1 on 1 ミーティング」)とは、「部下の成長を目的にした1対1のミーティング」のこと。課題解決や人材育成などの効果が期待でき、活用する企業が増えているようだ。 コーチングが「目標設定」を前提としているのに対して、1 on 1では、場合によっては目標設定などを抜きにした会話がなされるなど、「対話の場」になっているのが特徴、と著者は1 on 1を紹介する。1 on 1を実施している企業には、業績の向上や離職率の低下、社員満足度の向上といった成果が表れている事例が数多くみられるという。一方で、失敗事例もあることから、本書はコーチングや1 on 1に役に立つ対話の技術を磨き、その質を高めるための練習法を紹介する。第1章「まず、向かい合ってみる」から、第2章「心から聴く、そして返す」、第3章「問いかける」、第4章「伝える、振り返る」、第5章「実践する、そして分かち合う」まで、全5章を通じて20のレッスンが収められている。内容によってエクササイズの進め方もわかりやすく説明されており、人事労務担当者はもちろん、社員一人ひとりが手軽に活用できる指南書となっている。労働法弘兼流「老春時代」を愉快に生きる1 on 1の対話レッスンワンランク上のコーチングワン オン ワン知識をワンランク深掘りしたい人のためのテキスト人生の後半を愉しく快適にする歩み方、働き方とは業績の向上、社員満足の向上につながる技術が学べる

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