エルダー2020年12月号
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2020.124ビジネスコンサルタント・有限会社エマメイコーポレーション 代表取締役大塚 寿さんい。一つ目はこれまでスペシャリストでやってきた人を遇する「顧問・フェロー制度」。二つ目は営業系の「歩合制度」。例えば、一部の企業ではシニア社員を対象に実施していますが、本人にテリトリーを与えればやる気も出ます。三つ目が「請負・委任契約」。一定の業務を本人の裁量に任せるやり方です。四つ目が「ロイヤリティ契約」。例えば、リクルートには研修のプログラムを作成し、受注すると数%のロイヤリティを受け取っている人もいました。五つ目が「週3日のパートタイム」など柔軟な働き方です。仕事はしたいが、責任を持ちたくない人もいます。 現在、多くの企業の年齢構成は就職氷河期世代が少なく、バブル期入社組が多いというワイングラス型のいびつな形状になっています。労働人口が減るなかでバブル世代が抜けると、困難な状況になるのは必至です。だれが若い世代を育成し、業務をになうのか。結局、シニア人材を活用するしかありません。そうなると、一律の働き方と処遇を続ける企業は勝てません。低責任・低収入から高責任・高収入になる仕組みなど、本人のやる気を引き出す幅広い選択肢をつくることで、逆に優秀なシニア人材を獲得することもできるはずです。―今後の高齢者雇用の展望についてご意見をお聞かせください。大塚 企業には60歳からの活躍をうながす仕組みづくりに積極的にチャレンジしてもらいたいですし、できれば50代から始めたいものです。制度や仕組みはやってみないとわかりません。果敢に挑戦することが大事なのです。また、企業としては活かす価値のある経験なのかを精査し、適した仕事をになってもらうことです。人手不足で困っている業務や、中高年にしかできない仕事はたくさんあります。特に設備系の企業は人手不足が深刻ですし、これから廃炉作業が始まる原子力技術者も若い人が少ない。メインフレーム※2のメンテナンスも、CコボルOBOL※3などの古い言語がわかるシニアにしかできません。いまは雇う側も雇われる側も思考停止に陥っているように見えます。世の中にはさまざまな仕事がありますし、それによってシニアの生き方に風穴を開けたいと思っています。―最後に定年が視野に入ってきた中堅層へのアドバイスをお願いします。大塚 75歳まで働くのはあたり前という前提で人生設計をしてほしいと思います。これまで宮仕えを長く続け、そのまま尻すぼみの人生というのはあまりにも哀れです。失敗してもいいから最後はやりたいこと、できることにチャレンジしてほしい。65歳になれば子どもも自立して身軽になりますし、やりたいことがやれるチャンスです。フランスの詩人アナトール・フランスの「もし私が神だったら、青春を人生の終わりに置いただろう」という私の好きな言葉があります。人生の「おまけ」のイメージが強いセカンドライフではなく、責任やしがらみから解放されるからこそできる、リアルに自分が望む生き方、「リアルライフ」を実現してほしいと思います。65歳になればしがらみから解放されやりたいことがやれるチャンス(聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博)※2 メインフレーム……主に企業などの基幹業務用システムなどに用いられる大型のコンピュータのこと※3 COBOL……事務処理用に開発された最初期のプログラミング言語の一つ

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