エルダー2021年1月号
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特集高齢期まで元気に働くための「治療と仕事の両立支援」エルダー9い場合においては配置転換もあり得ますが、最初から配置転換ありきで議論すると論点がぼやけがちになり、職場側の一方的な配慮になるのみならず、不当な配置転換になることもあるので注意が必要です。どうしても病状がその職場で合わない場合に配置転換をすることを検討しましょう。6健康情報の取扱い方のルールを決めましょう両立支援で取り扱われる健康情報は機微な情報です。したがって、不特定多数の目に触れるような取扱いは法令違反になります。健康情報の取扱いを担当する者の範囲を定めることが必要になります。一般的には、職場の医療職と衛生管理者などが該当します。就業配慮を実施する場合には、就業配慮の影響がおよぶ同僚に健康情報の一部を周知する必要があります。その際にも本人に周知することの同意をもらうことが肝要です。これらのことを留意しながら実践できる仕組みを構築することが必要になります。治療と仕事の両立支援を行ううえで利用できる制度前述のような両立支援を実践するためには、職場内で利用できる制度を整理しておくことが必要になります。両立支援を実践するために有用な制度は次のようなものがあります。また、制度があっても職場の雰囲気で利用しづらくなっていることもよくあるので、制度のみならず運用面でしっかり使えるようにすることも大事です。1時間単位の年次有給休暇例えば、放射線療法などは毎日治療を受けることが必要になりますが、毎回1時間程度で終了します。半日単位でしか休暇が取れない場合はその取得により、あっという間に休暇が足りなくなります。また、夕方から治療を受けることができる医療機関などもあり、早めに退社できると助かる労働者もいます。少し体調が悪いときなどの早退にも使えます。時間単位の年次有給休暇制度は、治療しながら就業するときに有用です。2病気休暇・病気休職(企業により名称が異なる)多くの会社が有給休暇とは別に、病気をしたときに休むことができるよう備えている制度です。法令で定められたものではないので会社によって期間はまちまちです。労働者のなかには自分が何日休むことができるか知らない人も多いので、休暇届が出たタイミングで期間を伝えるといいでしょう。3時差出勤満員電車で気分が悪くなる労働者もいますし、おなかの手術をした後はトイレの回数が頻回になります。また、休み明けはとにかく疲労しやすくなるものです。通勤による混雑の負担を避けるために時差出勤の制度は、特に都会に住む労働者にとっては有益になります。4短時間勤務長期の休暇後は、多くの人が思っている以上に疲労がたまりやすいようです。特に復帰後数日は、家に帰ってすぐに倒れこむように眠る人などもいます。したがって、慣らし運転の意味で短時間勤務制度があるといいでしょう。短時間勤務制度の利用は、目的を明確にすることが

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