エルダー2021年1月号
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特集高齢期まで元気に働くための「治療と仕事の両立支援」エルダー11はじめに1がんの発症は年齢とともに増加し、今は2人に1人ががんになる時代となっています。40代、50代からがんの発症は多くなりますが、女性では30代から乳がんや子宮がんの発症が多くなります。就労年齢が高齢化しているなか、これからがんの治療をしながら仕事を続ける方も増えていくと思われます。2018(平成30)年の診療報酬改定では、がん患者に対し、「療養・就労両立支援指導料」が新設され、医療機関での両立支援が推進されることとなりました。しかし、「がんの治療と仕事の両立」に関しては医療機関や事業場をはじめ、社会的な理解や環境整備がまだ追いついていないのが実状と思われます。2﹁治療と仕事の両立支援﹂の周知がんは生じる臓器や進行度により治療経過が異なり、内視鏡治療で治る早期胃がんや悪性化することの少ない前立腺がんなどは、発症後も発症前と同じような社会生活を続けることができます。がんの治療法は年々進歩し治療経過もよくなっており、「がんは不治の病」という昔のイメージではなくなっています。自分ががんになる確率は半々という漠然とした認識を持っている方もいらっしゃいますが、実際にがんと診断されるとすぐに仕事を辞めてしまう方も多いのです。「60歳を過ぎて仕事がつらくなってきた」、「再雇用で以前とは違う仕事になっている」などという方に、病気というイベントが加わることで「仕事は辞めよう」と決めてしまう方がいます。しかし、がんと診断されたからといって、急いで仕事を辞める必要はありません。いまは手術治療が短期化されており、抗がん剤治療や放射線治療も外来通院での治療が主体となっているため、がんの治療と仕事の両立が可能となっています。いったん離職すると再就職の条件は厳しくなり、治療継続には医療費も負担となります。体調も回復し時間もあるのに仕事がないことにもなりかねません。がんと診断されて急いで仕事を辞めてしまうことのないように、がんになる前の段階で「治療と仕事の両立」が可能なことを知っておくよう、社会への周知も重要です。がんと診断されたら3がんと診断されたら今後の経過や治療内容と独立行政法人労働者健康安全機構 東京労災病院 治療就労両立支援センター 加藤宏こう一いち解 説1がん患者の両立支援2人に1人が「がん」に罹患する時代診断・治療・復職の段階に応じた対応を

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