エルダー2021年1月号
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2021.11650代以降は加速度が増しますから(図表1)、就労年齢の高齢化が進む現在、脳卒中対策は健康経営や両立支援といった観点で非常に重要といえます。健康経営の観点から2脳卒中予防(再発予防を含めて)のためにできることは、禁煙・肥満対策・高血圧対策・糖尿病対策ということになります。降圧剤の調整や血糖測定は医療機関に委ねますが、職場でもできることがあります。それは、職場内禁煙・体重測定・血圧測定、そして運動です。最近多くの職場で禁煙が実践されていますが、喫煙は脳卒中だけでなく、心疾患やがんでも重要なリスクです。受動喫煙を避ける意味でも重要ですので、ぜひとも推進していただきたいと思います。体重測定と血圧測定については、例えば食堂や休憩室などに体重計や血圧計を置くことは可能ではないでしょうか。コントロールの基本は評価・測定です。毎日測る習慣がつくだけでも予防効果は大きいと思います。運動については、休憩時間に体操の場内放送や動画を映すなど、インストラクターが各部署を回って運動指導している職場も見受けられます。両立支援の観点から3■両立支援のための職場環境整備脳卒中は患者数が多い疾患とはいえ、両立支援を経験したことがない職場も多いと思います。どの疾患でもそうなのですが、成功経験があると受け入れやすいものですが、未体験の場合には否定的になりがちです。がんも脳卒中も高齢化で一気に増加します。どちらも数人に1人の割合ですから、実はあなたが知らないだけで、職場には申告しないで治療している従業員もきっといると思われます。軽症の場合はそれですむかもしれませんが、通常はまとまった休みも必要になり、金銭面の心配もあります。新型コロナウイルス感染症でも同じことですが、いつ何時自分も罹かかるかも知れないのが実状です。そのため、まずは元気なときから「他人ごとではない、明日はわが身」と、病気になったときのことを考えておくことが大切です。そのとき、職場では一体何ができるでしょうか? そんなときに相談できる窓口と担当者は明確になっていますか? 何でも相談できる上司に恵まれている労働者ばかりではありません。いきなり人事課に行くのはもっとためらいがあるでしょう。産業医や産業保健スタッフは選任されていますか? 存在したとしても実際に相談できる状況にありますか? 罹患労働者がまず困っているのはこの相談窓口です。「うちの職場ではいえる雰囲気ではない」や「とうてい理解してもらえない」といった声はよく聞かれます。両立支援は労働者の申し出があって始まるとされています。しかし、このようなためらいや諦あきらめがあったのでは申し出さえもできません。次に職場で可能な具体的な配慮について整理してみましょう。脳卒中による神経症状の主なものは、手足の運動麻痺(片麻痺、49・3%)、呂ろ律れつが回らない(構音障害、23・5%)、意識障害(20・1%)、言葉の理解や発語ができない(失語、17・4%)、空間の半分が認識できない(半側無視※1、14・1%)、感覚障害(7・0%)などの順に多いようです(図表2)。これらの症状は発症から概おおむね6カ月間は回復していきますが、それを過ぎると後遺症として残ることがほとんどです。したがって重度の後遺症が残る場合には、治療とリハビリテーションのため最長半年間の入院とその後の自宅療養を経て職場復帰を考えるというパターンになります。年次有給休暇だけではカバーできませんが、御社には病気休業制度はありますか? 復職する際に利用可能な制度としては、時間単位の年次有給休暇、時差出勤、時短勤務、在宅勤※1 半側無視……視力は問題ないにもかかわらず、視界の半分を認識できなくなること

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