エルダー2021年1月号
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特集高齢期まで元気に働くための「治療と仕事の両立支援」エルダー19糖尿病は本当に「生活習慣病」でしょうか?1みなさん、「糖尿病患者」と聞いてどのようなイメージをされるでしょうか。暴飲暴食したうえで運動もせずゴロゴロして太っている方を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。そして糖尿病は「生活習慣病」と呼ばれています。でもこれは多分に誤解なのです。こういった悪い生活習慣は糖尿病を悪化させるのはたしかですが、決して生活習慣が悪いことのみに起因して糖尿病に罹かかってしまうわけではありません。実は持って生まれた「体質」がとても大きく関係していることがわかってきています(2型糖尿病の場合半分くらい)。暴飲暴食して太っても、「体質」がなく糖尿病にならない方もいます。また1型糖尿病という特殊な糖尿病は、関節リウマチのような自己免疫疾患であって、発症に生活習慣はまったく関係がありません。この場合、運が悪かったとしかいいようがないのです。糖尿病=高血糖自体は個々の労働者の業務遂行能力に直接影響を与えることは一般的にありませんが、慢性的な高血糖状態は将来深刻な糖尿病慢性合併症へ進展し、視力障害や人工透析などが業務遂行能力に悪影響をおよぼして、就業の継続や復職をむずかしくします。また、この高血糖の代謝失調は血糖正常化した後も、長期に渡り悪影響が残ることが知られています。慢性合併症は、良好な血糖管理を維持できれば予防可能であり、より早期からの継続治療が大切です。就労糖尿病患者が真摯に治療に取り組むためには、治療と仕事との両立が円滑に行われていることも重要です。糖尿病患者に望ましい職場での両立支援2最近、高齢化と就業年齢の上昇にともない、糖尿病の治療を受けながら働く高齢の就労者が増えています。しかし多忙を理由に糖尿病治療を自己中断してしまい、糖尿病合併症の進行を招き、失明、人工透析、下肢切断になる方がいます。この自己中断の対策に、患者の職場側の役割が期待されています。治療チームの一員として職場の方も参加いただき、主治医とともに就労糖尿病患者を支援していく仕組みが望まれます。われわれのアンケート調査※1によれば、糖尿病患者が仕事と治療の両立上、職場で必要と感じている支援は、①治療法、体調などに応じた柔軟な勤務体制、②治療・通院目的の休暇・休※1  N=901、労災疾病等13分野医学研究・開発、普及事業「勤労者の罹患率の高い疾病の治療と職業の両立支援」就労と治療の両立・職場復帰支援(糖尿病)の研究・開発、普及プロジェクト、平成21-25年度(文献1)独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 治療就労両立支援センター 中島英太郎解 説3糖尿病患者の両立支援糖尿病≠生活習慣病理解を深め治療継続への配慮を

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