エルダー2021年1月号
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特集高齢期まで元気に働くための「治療と仕事の両立支援」エルダー21用している場合に多く発症します。血糖値の程度によって、冷や汗、手指の震え、動悸、異常な空腹感、意識レベルの低下などの症状が出現しますが、個人差もたいへん大きいです。多くの場合は軽度であり、10~20gの糖分摂取によりご自身のみで対応できます。職場で特に注意を要するのは無自覚性低血糖症で、長期間の糖尿病罹病歴があり自律神経障害が進行していたり、頻回の低血糖をくり返すことにより低血糖に“慣れ”てしまったりした場合に、かなりの低い血糖値でも前駆の自覚症状が出にくくなり、突然意識を失って倒れ救急搬送が必要となることがあります。このような方はリスクをともなうため運転業務や危険作業従事は絶対に避けるべきです。治療の最適化や生活・仕事のリズムの適正化により無自覚性低血糖を未然に防ぐことが可能です。高齢者における低血糖症の特徴7高齢の糖尿病患者では、加齢による腎機能や肝機能の低下のため薬剤性低血糖が生じやすく、低血糖に対する気づきも鈍くなり対応が遅れがちです。周囲の目があると安心ですし、常時ブドウ糖を携行、常備しておくことが重要です。また異常を感じたときは、ただちに血糖測定が必要なため、自己血糖測定機器の携行も必要です。運転前の自己血糖測定も望まれます。職場もチーム医療の一員へ両立支援手帳の活用8仕事と治療の両立支援には職場のスタッフも患者の治療にチームの一員として参加してもらう職域連携(図表1)が重要と思われます。当院では新たに「就労と糖尿病治療両立支援手帳」(図表2)を作成し、医療者側から患者を通して職場にアプローチし情報共有を図り、治療成績向上や通院継続支援を行っています。手帳の交換相手は患者の上司であることが多いですが、反応としては好意的なものが想定以上に多く得られています。またこの支援活動によりHbA1c値※2や体重が有意差をもって低下し、臨床的データの改善もみられました(文献2)。2018(平成30)年4月には、就労がん患者の主治医と産業医間で提携して治療方針の見直しを行うことに対して、新規で診療報酬上の保険点数がつきました(療養・就労両立支援指※2 HbA1c値……糖化ヘモグロビンの割合を示す数値。血糖値が高いほどこの数値が高くなる※筆者作成図表1 望ましい患者・主治医・企業の関係良好な血糖管理➡合併症発症進展抑制➡治療中断の抑制➡治療反応性➡ 自覚症状訴え➡職場での問題点➡➡HbA1c判定基準➡健診後のフォロー➡受診継続勧奨 ➡通院状況報告 ➡血糖管理状況報告糖尿病状況報告➡糖尿病啓発➡職場環境整備➡➡治療法変更➡就業制限、職場異動➡患 者(従業員)企業産業医看護師・保健師安全管理者医療機関(主治医)患者・主治医・企業の関係(目標)就労と治療の両立

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