エルダー2021年1月号
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2021.122導料1000点+相談体制充実加算500点、ただし6カ月に1回)。また2020(令和2)年度より、脳卒中、肝疾患、難病などについても保険適用されました。しかしながら糖尿病患者に対する公的な仕事と治療の両立支援対策は、保険診療化を含めまだ行われていません。今後の対応が望まれます。9糖尿病での両立支援上の障害としてのStigma(烙印)職場との連携でしばしば障害となるのは、一般の方が糖尿病に対して「糖尿病は生活習慣病であり、本人の生活習慣の乱れの結果であり自己責任である」と思われていることです。先に述べた通り、免疫異常である1型糖尿病もひとくくりとされ、また2型糖尿病の発症には遺伝素因が大きくかかわっていることは一般には認識されていません。非専門の医療者の間でさえ同様な認識があります。この問題はアメリカ糖尿病学会では「Sスティグマtigma(烙印)」として取り上げており、標準治療のガイドラインで一章を使っています。否定的な先入観あるいは偏見が職場での無理解につながり、仕事と糖尿病治療の両立支援のうえで障害となります。極端な例ではインスリン自己注射療法中の1型糖尿病患者でも、失職や昇進の遅れなどを危惧して職場の上司や同僚に隠していることがあり、低血糖時の対応の遅れを生じることもあります。このような状況では両立支援自体が困難です。支援活動と同時に啓発を行いながら、一般社会での認識を改善していくこと(患者の擁護=aアドボdvocカシーacy)もたいへん重要なことと思われます。日本糖尿病学会および日本糖尿病協会もアドボカシー委員会を設立(2020年11月)したところで、今後の啓発活動が期待されます。おわりに10最近、定年後再雇用の促進や定年年齢の引上げと糖尿病患者の増加が相まって、糖尿病の治療を受けながら働く方が増えています。現在、労働者健康安全機構は、医師-患者-企業連携を推進し就労患者の両立支援を行うための連携ツールとして両立支援手帳を作成し、治療就労両立支援事業を実施しています。将来の就労糖尿病患者の治療成績向上と治療継続による慢性合併症発症と進展予防に寄与できればと考えています。高齢の糖尿病患者は、罹病歴が長く慢性合併症が進行している場合が多いこと、年齢による臓器の機能低下のため、薬剤性低血糖に対しより脆ぜい弱じゃくになるなど、特有の特徴があります。よりきめ細やかな配慮をしていただけましたら幸いです。また、糖尿病患者に対する支援はがんとは異なり、復職よりも治療継続に重点が置かれます。両立支援活動が広まり、こういった配慮があたり前のように行われることを期待しています。【参考文献】⒈ 中島英太郎:労災疾病等13分野医学研究・開発、普及事業「勤労者の罹患率の高い疾病の治療と職業の両立支援」.就労と治療の両立・職場復帰支援(糖尿病)の研究・開発、普及プロジェクト結果:http://www.research.johas.go.jp/booklet/pdf/2nd_digest/12-2.pdf⒉ 中島英太郎、大森恵子、渡会敦子、ほか:労災病院での治療と就労両立支援モデル事業の取組とアウトカム、糖尿病、61:suppl 1,S377,2018※中部労災病院糖尿病・内分泌内科で作成図表2 就労と糖尿病治療両立支援手帳(医療機関向け)

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