エルダー2021年1月号
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特集高齢期まで元気に働くための「治療と仕事の両立支援」エルダー25知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15・0%)でした。これは、今後増加していくと見込まれています。認知症のなかで代表的なものは、「アルツハイマー型認知症」、「血管性認知症」、「レビー小体型認知症」です。認知症の症状は徐々に進行していくと考えられます。就労可能な状態であれば、まず本人ができることを確認し、それが維持できるような環境を整えることを検討します。なるべく定常作業を行わせる、本人もメモを取るなどして忘れないように工夫を行い、主治医にはどのような配慮が必要なのかを確認しましょう。うつ病は、①抑うつ気分と、②興味・喜びの喪失のいずれかの一つに加え、食欲低下、睡眠障害、焦燥感、疲労感などが認められる疾患です。高齢者のうつ病は、抑うつ気分よりも疲れやすさ、頭痛、肩こりなど身体の不調を訴える傾向があります。認知症との区別がむずかしい場合もあります。休業が必要な場合もありますが、軽症の場合は内服治療を行いながら仕事を続けることが可能です。一般的に高齢者は、再発のリスクが高いことから、寛解後(症状がよくなった後)も長期に内服治療が必要とされます。薬の副作用で、ふらつき、眠気などが出る場合もあります。主治医と連携し、気をつけるべき業務内容を確認しましょう。4メンタルヘルス不調者の両立支援「病名が何か」(疾病性)よりも「この人が治療と仕事を両立させるにあたっての問題点は何か」、「職場では何が問題か」(事例性)ということを念頭において支援を行いましょう。高齢者とそのほかの年齢層で両立支援自体に大きな違いはありませんが、高齢者の場合、家族などの支援者が少ない、もしくは遠方にいて実際に協力してもらうのがむずかしいなどが考えられます。2018年の『労働安全衛生調査(厚生労働省)』によると、ほかの年齢層に比べ、60歳以上の方がストレスを相談できる人がいる割合が少なくなっています(図表2)。職場では、プライバシーに配慮しつつ、不調をきたす前に積極的に声をかけるようにしましょう。主治医に職場でできる具体的な支援についてアドバイスをもらったり、高齢者がアクセスしやすい相談窓口を設けたりするのもよいでしょう。服薬アドヒアランス(薬の必要性を理解して、適切に内服を行うこと)が低下することも懸念され050100150200250300350400450(単位:万人)平成14平成17平成20平成23平成26平成2922.834.934.236.833.832.028.90.527.239.546.237.739.736.040.60.527.735.850.041.643.339.951.40.627.933.750.440.237.833.364.21.036.336.258.552.445.547.884.91.038.536.258.263.947.751.493.30.7不詳75歳~65~74歳55~64歳45~54歳35~44歳25~34歳0~24歳 389.1361.1287.8290.0267.5223.9出典:厚生労働省「患者調査」より図表1 精神疾患を有する外来患者数の推移(年齢階級別内訳)

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