エルダー2021年1月号
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2021.126ます。同居家族がいない場合は、上司や同僚が本人の不調に一番早く気がつくことがあります。何らかの治療を受けている人がいたら、薬の飲み忘れがないか、定期的な通院を行っているか、いつもの様子と違っていないかどうか、違っていたらひとこと声かけを行うなど配慮を行いましょう。今後、テレワークが増えていくとすると、機器に慣れることや通信トラブルに対応するスキルが必要となります。ちょっと立ち話をするといった雑談が減り、コミュニケーションが不足していくことも考えられます。自宅で適切なVDT※1作業が行われず、肩こりや眼精疲労を悪化させる可能性もあります。その一方、通勤の負担が減ることは高齢者にとってよいことでもあります。さまざまなツールを利用し、働きやすい環境を整えることが大切です。両立支援で困ったことがある場合には、両立支援コーディネーターを活用する、産業保健総合支援センター、保健所、市町村保健センター、精神保健福祉センターなどに相談するとよいでしょう。おわりに5認知機能低下や身体機能低下はだれにでも訪れることです。認知機能が低下しても、すぐに働けなくなるということではありません。「つまずきやすいものは排除する」、「作業や注意事項はわかりやすく掲示する」ことは、全員が働きやすい環境整備につながります。今後高齢者の就業が増えていくことを機に、お互いを尊重し、安全で安心できる環境とはどういったものか、検討するよい機会であるともいえます。そして、いまはご自身が高齢者でなくても、健康に留意し、日ごろから生活習慣を整えておくようにしましょう。運動も大事ですし、趣味なども継続して、仕事や家庭以外の居場所を見つけておき、ストレス解消を上手に行いましょう。新型コロナウイルス感染症拡大にともない、外出などの気分転換がしづらい状況にあります。家のなかでできること、1人でできることなどを見つけておきましょう。社員教育に身体機能、認知機能、メンタルヘルス、ストレスコーピング※2についての知識を盛り込むことも有用と思われます。「高齢者」という一面だけに注目して対応せず、個々の事情に配慮した支援が望まれます。※1 VDT……Visual Display Terminalsの略。パソコンなどのディスプレイを持つ画面表示装置のこと※2 ストレスコーピング……ストレスの基にうまく対処しようとすること【参考文献】『高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン』厚生労働省『高齢者のうつの基礎知識』厚生労働省『認知症診療医テキスト』日本精神神経学会『よくわかる高齢者心理学』佐藤眞一/権藤恭之 ミネルヴァ書房『両立支援コーディネーターマニュアル』労働者健康安全機構20歳未満20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60歳以上89.2%95.9%94.9%91.9%91.8%86.7%出典:厚生労働省『労働安全衛生調査(実態調査)』(2018年)よりグラフ化図表2 年齢階級別 ストレスを相談できる人の有無

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