エルダー2021年1月号
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はじめに現在、わが国の65歳以上の人口は、全人口の3割近くにも及び、今後も増加が見込まれ、2065年には 4割近くに達すると推計されています。高齢者の増加にともない、働く高齢者も増加し、さらに、いつまでも働きたいと意欲を持つ人も増加しており、そのことが働く高齢者の増加に拍車をかけています。働く高齢者の増加により、高齢者の労働災害も増加しています。その特徴は、簡単な作業での労働災害が目立つこと、被災すると重傷になるケースが多いことなどがあげられます。このため、安倍政権の時代には、『骨太の方針2019(経済財政運営と改革の基本方針)』において「サービス業で増加している高齢者の労働災害を防止するための取組を推進する」が盛り込まれるなど、高齢者が安心して安全に働ける職場環境づくりや健康づくりが重要な政策課題に位置づけられました。これを受け、厚生労働省は2020(令和2)年3月に『エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の健康と安全の確保のためのガイドライン)』※1を策定し、2021年度はこの施策の普及が推進されています。このような状況のもと、本連載は「エイジフレンドリーな職場をつくる」をテーマに、"エイジフレンドリーな"、和訳すれば"高齢者の特性に応じた"職場の安全対策、健康確保策をどのように進めていけばよいかについて解説します。第1回目の今回は、なぜいま、エイジフレンドリーな職場づくりが必要なのかについて解説します。※1 エイジフレンドリーガイドライン……本誌2020年7月号50~57頁に全文を掲載しています 生涯現役時代を迎え、60歳、65歳を超えて、より長く活躍してもらうためには、企業が職場における安心・安全を確保し、高齢社員が働きやすい職場環境を整えることが欠かせません。本連載では、高齢者の特性を考慮した〝エイジフレンドリー〞な職場の実現方法について、職場の安全管理にくわしい高木元也先生の解説を連載していきます。労働安全衛生総合研究所 安全研究領域長 高木 元也なぜいま、エイジフレンドリーな職場づくりが注目されているか第1回新連載―エイジフレンドリーな職場をつくる―高齢社員のための安全職場づくり

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