エルダー2021年1月号
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エルダー41■腰痛は、業務上疾病のなかで最も多く、高齢者に多い業務上疾病とは、仕事中にかかる病気、いわゆる「職業病」のことですが、最も多いのが腰痛です。腰が痛いと訴える人は、60代、70代がかなり多くなっています(図表6)。職場の腰痛対策には、人が持ち上げる重量の制限、機械化・ロボット化による重い物や人を持ち上げる作業の廃止、パワーアシストスーツ着用などによる負荷軽減、正しい持ち上げ方の教育、腰痛予防体操などがあげられ、このような対策の職場への導入が必要となります。■熱中症災害は男性の高齢者に多い夏場の熱中症対策は、もう何年も前から声高に叫ばれてきました。これだけ、「水分、塩分、適度な休憩が必要」といわれ続けてきても、熱中症災害は減少せず、2011年〜2017年、職場の熱中症による休業4日以上死傷者数は毎年500人前後と横ばい状態でした※4。当時、「いくら対策しても、熱中症災害は減らないのでは」と弱気な声がきかれましたが、2018年は下がらないどころか、1128人と2倍超に急増しました。翌年の2019年も800人台と留まることを知らず、熱中症災害の防止は、わが国の労働災害防止対策上、重要な課題に位置づけられています。熱中症災害の発生率は、年齢が上がるとともに男性の発生率が高くなっています※5。事業場からは、高齢者の課題として、「のどの渇きを訴えない」、「補給する水分の量が少ない」などが指摘されています。■脳・心臓疾患の患者は、加齢により増加し、労災認定事案の割合も少なくない脳・心臓疾患の患者のうち、労災認定事案は40歳以上が約9割を占めています※6。比較的責任のある立場に就くことが多い50代が最も多いですが、60代、70代でも30代よりかなり多くなっています。ここでも、高齢者の働き方を改善する取組みが求められます。■高齢者は、働くためには仕事の専門知識よりも健康・体力を重視する60代の働く高齢者を対象に「65歳を過ぎても勤めるために必要なこと」をきいたところ、「健康・体力」とする回答が66・8%を占め最も多く、「仕事の専門知識・技能」47・2%、「いつまでも現役で活躍するという意欲」34・6%などと比べ、一段と高い結果となっています※7。高齢者にとっては、働くために健康・体力の確保が最も大切で、それをサポートする職場での活動が必要となります。おわりに以上、今回はさまざまな統計データを基に、エイジフレンドリーな職場づくりの必要性をみてきました。次回は、2020年3月に厚生労働省が公表した『エイジフレンドリーガイドライン』の概要を紹介します。そのなかで、特に、事業者に求められる新たな視点である高齢者一人ひとりの健康と体力の状態の把握と、それに応じた対策について詳しく解説します。※4 厚生労働省「労働者死亡傷病報告」(2018)・「死亡災害報告」(2018)および都道府県労働局からの報告による2018年中に発生した災害で休業4日以上および死亡のもの、総務省「労働力調査」(2018)※5 厚生労働省『2019年職場における熱中症による死傷災害の発生状況』※6 厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(2019年度)※7 独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査」(2015年度)0100200300400500600700(千人)※ 熊本県を除いたもの ※ 上記の人数には、入院者は含まない15〜19歳20〜24歳25〜29歳30〜34歳35〜39歳40〜44歳45〜49歳50〜54歳55〜59歳60〜64歳65〜69歳70〜74歳75〜79歳80〜84歳85歳以上5864104152236300329317383474656577554492319出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2016年)図表6 腰が痛いと訴える人数高齢社員のための安全職場づくり―エイジフレンドリーな職場をつくる―

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