エルダー2021年1月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー49これらの手当については、法律上で支給を定められているものはありません。そのため、あえて支給している手当に会社の考えや置かれている状況が表れることになります。例えば、②が手厚いのは特殊な技能が必要な会社、⑤は社員の中長期的な勤務を望んでいる会社、⑥は事業所のある地域が分散している会社などです。これらの事情がない、もしくは明確なポリシーのもと、通勤手当以外は基本給で一本化している会社もあります。なお、実務的な背景として、基本給の高さと賞与額や退職金が直接連動している会社がその額を抑えるために、給与総額は変えずに基本給と手当を切り分けていたケースもあることは押さえておいてもよいでしょう。手当に関する動向手当の支給割合や支給額などは、図表で扱った就労条件総合調査(厚生労働省)のほかに、職種別民間給与実態調査(人事院)、賃金事情等総合調査(中央労働委員会)などでも大きく扱っており、かつ一般公開されているため単年度の傾向が把握できます。手当全体の増減傾向については、「就労条件総合調査」の「過去3年間の賃金制度の改定内容別企業割合」において「手当を縮減し基本給に組入れ」が平成26年調査計で4・5%、平成29年調査計で11・1%となっており、縮小傾向といえます。一方で、世間の動向には一方的に縮小とはいい切れない動きも出てきています。まずは「人手不足への対応」についてですが、就労人口の減少もあり、特に若手の採用が困難ななかで、給与額の底上げや〝従業員を大切にする会社〞とのイメージを打ち出すことを目的に、家族手当(特に子ども部分)や住宅手当の新設・拡充に取り組む会社も出てきています。次に「テレワークの拡大」ですが、新型コロナウイルス感染症予防対策の一環で、自宅などオフィス以外の場所で勤務する、テレワークを導入している企業が2020(令和2)年に一気に増えました(東京都の「テレワーク導入実態調査結果」では、導入率57・8%)。手当に関係するのが、通勤手当の廃止(または縮小)と在宅勤務手当の導入です。勤務する場所がオフィスから自宅に変わることで、必要な実負担が自宅の光熱費やインターネット回線にシフトしていることへの対応です。最後に「同一労働・同一賃金への対応」です。具体的な内容については、厚生労働省のガイドラインや弁護士の判例解説を参照することをおすすめしますが、雇用区分にとらわれず、手当の支給目的と対象者をあらためて検証する動きが活発になっていることについて、本稿でも触れておきたいと思います。定年後の継続再雇用についても同様で、再雇用中は手当不支給として基本給一本にまとめてしまうケースが多かったのですが、特に①職務の重さや困難さに対する報奨や、②技能・技術習得者の確保に関する手当については、説明責任やモチベーション対策、優秀なベテラン確保の観点から、再雇用者であっても支給する動きが強まってきています。☆  ☆次回は柔軟な働き方の促進を目的とした「限定社員」について取り上げる予定です。出典:厚生労働省「平成27年就労条件総合調査の概況」より抜粋図表 諸手当の種類別支給企業割合(令和元年11月分)複数回答(単位:%)令和2年調査計計100.0業績手当など(個人、部門・グループ、会社別)13.9勤務手当役付手当など86.9特殊作業手当など12.2特殊勤務手当など24.2技能手当、技術(資格)手当など50.8精皆勤手当、出勤手当など25.5通勤手当など(1か月分に換算)92.3生活手当家族手当、扶養手当、育児支援手当など68.6地域手当、勤務地手当など12.2住宅手当など47.2単身赴任手当、別居手当など13.1上記以外の生活手当(寒冷地手当、食事手当など)15.3調整手当など31.5上記のいずれにも該当しないもの13.9

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