エルダー2021年1月号
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エルダー51生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム●新潟・愛知会場開催レポート高齢者が活きる仕組みづくりは社員全体の満足度を高める高齢者雇用を進めている会社を見ると、トップの意思決定が大きく影響していると感じることがよくあります。この先、自社を成長させていくためには、おそらく多様な人材が入って、刺激し合い、会社の成長に結びつくことが望ましいのだと思います。そういったなかで、会社を強くしていく。その主要戦力の一つとして、シニアにもがんばってもらう。そのために、シニアが強みを発揮できる仕組みをつくっていく。こういった意識を持ったトップが、一歩ふみ込んで、定年延長や定年廃止などに取り組んでいる事例が多くあります。組織として、なぜシニアを活用するのかといえば、彼らが強みを持っていて、その強みを活かすことが会社の成長、活性化につながり、後に続く人たちにも刺激を与えるから、ということだと思います。その際、シニアが活きる仕組みをつくり、やりがいのある仕事、役割を提供する工夫が大事になります。例えば、高齢になると体力的な面や仕事への向き合い方などがより多様になってきます。多様な人たちを戦力として活用するためには、多様性に対応した仕組みづくりが必要になります。また、貢献度を「見える化」することも大事なことです。頑張っても頑張らなくても同じ給与では、モチベーションに大きく影響します。シニアが活きる仕組みづくりを進めることで、シニアはもちろん、若い人や中堅の人たちの視点でみると、自分の将来の姿と重ね合わせるので、社員・構成員全体の満足度を高めることになりますから、やってみる価値はあると思います。高齢者施策は、単に高齢者を対象にしているわけではない、そこを意識していただけたらと思います。一方で、シニアに意識改革をうながすことも不可欠です。高齢期前の研修実施により、「気づき」の機会を与え、備えてもらう。高齢期に求められる役割に気づいてもらう。そういった準備をするツールとして、50代前後に向けた研修テキストを(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構で作成していますので、ご活用いただければと思います。高齢者を活かして会社が強くなれる工夫を改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保が努力義務化され、2021年4月に施行されます。その就業機会の選択肢には、フリーランスとして契約を結んでみるとか、社会貢献活動にシニアを活かすといったことが示されています。会社とシニアと社会貢献活動がうまく結びつけば、さまざまな取組みができるでしょう。この改正法は、考えようによっては、会社を強くする活用がいろいろできそうです。シニアを活かして会社が成長する施策を、いまからシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。会社の力を引き上げるシニア活用戦略東京学芸大学 教育学部 教授 内田 賢基調講演

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