エルダー2021年1月号
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2021.14株式会社ノジマ 取締役 兼 執行役 人事総務部 部長田中義幸さんり、いつもと顔色が違ったりしているようだと、「今日はどうしたの?」と声をかけて気遣うなど、いわばメンターのような役割も果たしています。若い社員たちにとっても、両親ほどの年代の人と、上司・部下という組織の序列を意識しない関係のなかでコミュニケーションを築ける機会は、なかなか得がたいものだと思います。―定年後再雇用では、フルタイム以外の勤務形態も選べるのですね。田中 個別の事情に合わせて、柔軟に決めています。給与なども、定年直前の水準から一律に何パーセント下げるなどのルールは設けず、65歳からの所定の出勤日数や勤務時間数など、それぞれの働き方に応じて個別に契約しています。 当社には、定年後再雇用のスタッフにかぎらず、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など、さまざまな雇用形態のスタッフが大勢働いています。一応、正社員とは別の区分としていますが、どこが違うかといえば、雇用期間の定めの有無だけです。賞与の算定・支給方法も福利厚生も同じで、役職への昇進についても雇用形態による区別はありません。店長が契約社員で、部下が正社員という店舗もあります。もっとも、有期契約であっても、いずれは無期転換しますし、退職金は有期契約で働いた期間も含めて計算しますから、期間の定めの有無も、それほど大きな違いではないともいえます。 社員の多様性という面では、海外展開を積極的に行っていることもあり、外国人留学生の採用も増えています。さらに、コロナ禍で職を失う人の雇用の受け皿になるよう、最近では再び中途採用に力を入れており、多様なキャリアを持った社員が今後ますます増えると思います。シニア雇用についても、こうした社員の多様性重視の一環と位置づけることができると考えます。―ハイテク技術を活用したデジタル家電の進化など、取り扱う商品は急速に変化しています。シニアの方は追いつくのにご苦労されているのではありませんか。田中 その点はまったく心配していません。新しい技術が取り入れられて、これまでにない機能がつけ加わったとしても、長く家電を取り扱ってきたベースがあるかぎり、十分対応できます。現在、リモートワークが必要になり、自宅で機器やネットワークを整備するお客さまが増えていますが、シニアスタッフは「自分の出番だ」と張りきっています。お客さまも高齢化しているため、同じ世代の者として、お客さまが求めていることをよく理解できる強みもあります。 年をとると「頭が固くなり変化についていけない」、「自尊心が強くなり若い人と協調できない」などの思い込みが、シニア雇用の拡大を阻害する一つの要因ではないでしょうか。先入観にとらわれず、一人ひとりに向き合い、まずは一歩をふみ出してみることが大切だと思います。シニアに対する先入観を捨て一人ひとりに向き合う姿勢が大切(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博)

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