エルダー2021年2月号
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特集高年齢者雇用安定法が改正 ー70歳までの就業機会確保に向けてーエルダー9就業確保措置を講じるにあたっての留意点等4この改正高年齢者雇用安定法の施行に向けて、具体的な手続きや留意点等が指針等※5、※6で定められました。その概要や考え方については以下の通りとなっています。(1)対象者基準について70歳までの就業確保措置については、努力義務ですので、措置の対象となる高年齢者について、基準を設けて限定することが可能となっています(①70歳までの定年年齢の引上げ、③定年制の廃止を除く)。ただし、基準の策定にあたっては、次の事項に留意する必要があります。◦対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるものですが、事業主と過半数労働組合等※7との間で十分に協議したうえで、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと◦労使間での十分な協議のうえで設けられた基準であっても、事業主が恣し意い的てきに高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨や、ほかの労働関係法令・公序良俗に反するものは認められないことこのため、例えば次のような基準については、不適切であると考えられます。◦「会社が必要と認めた者に限る」、「上司の推薦がある者に限る」 ⇒ 基準がないことと等しく、改正法の趣旨に反するおそれがあります。◦「男性(女性)に限る」 ⇒ 男女差別に該当するおそれがあります。◦「組合活動に従事していない者に限る」 ⇒ 不当労働行為に該当するおそれがあります。なお、対象者基準については、次の点に留意して策定されたものが望ましいと考えられます。◦意欲、能力等をできるかぎり具体的に測るものであること ⇒ 労働者自ら基準に適合するか否かを、一定程度予見でき、到達していない労働者に対して能力開発等をうながすことができるような具体性を有するものであること。◦必要とされる能力等が客観的に示されており、該当するか否か可能性を予見することができるものであること ⇒ 事業主や上司等の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見可能で、該当の有無について紛争を招くことのないよう配慮されたものであること。対象者基準の策定にあたっては、これらをふまえ、労使で十分に協議することが望ましいです。(2)労使で協議すべき事項就業確保措置の五つの措置(3の①~⑤)のうち、いずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講ずることが望ましいです。なお、五つの措置のうちいずれか一つの措置により70歳までの就業機会を確保するほか、複数の措置により70歳までの就業機会を確保することも可能となっています。この場合、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについては、その高年齢者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定するよう留意してください。(3)安全衛生について高年齢者が従前と異なる業務に従事する場合には、新しく従事する業務に関して研修、教育、訓練等を行うことが望ましいです。特に雇用による措置を講ずる場合には、安全または衛生のための教育は必ず行わなければなりません(創業支援等措置を講ずる場合にも安全または衛生のための教育を行うことが望ましいです)。また、高年齢者が安全に働ける環境づくりのため、就業確保措置により働く高年齢者について、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(厚生労働省)を参考に、職場環境の改善や健康や体力の状況把握とそれに応じた対応など、就業上の災害防止対策に積極的※5 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第180号)※6 高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年厚生労働省告示第351号)※7 過半数労働組合等……労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者

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