エルダー2021年2月号
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2021.2122021.212高年齢者雇用安定法改正で急速に高まる雇用延長の機運組織の高年齢化によるシニア層の急増と就業希望年齢の上昇、また昨今の慢性的な人手不足などを背景として、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)が改正され、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となるなど、企業の雇用延長の取組みに対する機運は急速に高まっています。しかしながら、多くの企業で雇用延長の取組みがスムーズに進んでいるかといえば、そうではありません。企業の人事担当者を訪問すると、「経営トップから雇用延長を検討するようにいわれているが、何から手をつけてよいかわからない」という声をよく耳にします。実際に取組みを開始してみるとわかることですが、検討すべき事項は想像以上に多岐にわたります。例えば定年延長にあたり、「65歳まで一気に定年を引き上げるのか、段階的に引き上げるのか、どちらが適しているか」という選択肢一つをとってみても、検討すべきテーマは多く、議論も単純にはいきません。定年延長にともなう総額人件費増への対応に加え、シニア層の増加とさらなる高年齢化にともなって必然的に懸念される、仕事の生産性低下を抑制するための環境整備も重要な観点になります。特に高年齢化の進度が急激な企業のなかでは、将来視点で見た場合、組織内でシニア層が従事できる仕事が減少していく可能性(にもかかわらず雇用は維持しなければならない状態)を深刻視する向きもあります。また、いわゆる「同一労働同一賃金」、「無期転換」といった、関連する法律と自社の人事制度を整合させることも必要になってきます。以上のような、「経営上のリスク側面」の検討に直面した場合、解決に向けた具体的な方針が定まらず、シニア活用の議論が初期段階でストップしてしまう、ということがままあります。このような状況のなか、各企業においてはより本質的な議論が望まれるところですが、雇用延長を適切なタイミングで実施していくために必要なポイントは次の通りであると、筆者はとらえています。それは、「シニア層を取り巻く自社の経営環境をより深いレベルで分析したうえで、中長期的なシニア層の活用方針を経営層で共有すること」。これが、きわめて重要なスタートラインになります。しかしながら、大半の企業ではまともな現状分析が行われていないのが実情ですし、適切な手法を知る機会も乏しいようです。70歳までの雇用延長のポイント株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント 森中謙介解説1

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