エルダー2021年2月号
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2021.214ニア活用を積極的に推進していく方針であれば、他社水準よりも魅力的な賃金設定を検討すべきですし、役割の縮小・変更を前提とするのであれば、他社と見劣りしない最低限の水準に留める、という選択肢も十分方針になりえます。なお、統計資料としては、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」が比較材料として有用です。(3)シニアの環境分析前述の人員分析および賃金・人件費分析を通じて導いた雇用延長・シニア活用の方向性(理想型)との対比で、現実の組織がどのような状態であるかを分析する手法(理想と現実のギャップはどの程度あるか、ギャップを埋めるための重点課題は何か)が、「シニアの環境分析」です。具体的な分析の進め方は、大きくソフト面とハード面に分けて行います。① ソフト面の分析:仕事に関するシニア層の満足度を調査する(以下、調査項目例) • 仕事のやりがいはあるか • 働き方に対する不満はないか • 職場の人間関係に対する不満はないか • 金銭面、健康面での不安はないか など② ハード面の分析:社内の仕組みに関するシニア層の満足度を調査する(以下、調査項目例) • 人事制度に対する満足度はどうか • 職場環境に対する満足度はどうか • 能力開発の機会は十分か • 定年延長に対する希望 など具体的な調査の進め方としては、シンプルですが、シニア層あるいはシニア層を抱える管理職者層に対する社内アンケート調査(記名または匿名)および個別面談による聞き取りを中心に実施していく方法が最適です。雇用延長にともなう望ましい人事制度設計の進め方ここからは、雇用延長に際しての人事制度設計に関する基本的な考え方について解説します。もとより、各企業がどのようなプロセスかつタイミングで雇用延長を行うべきかについては、前述の「現状分析」の結果に基づくシニア層の活用方針により異なりますが、人事制度の設計上、共通して重要な論点が存在します。それは、「シニア層の職務ないし役割」を軸にした制度設計を行うことです。(1) 継続雇用制度の運用にともなう人事制度設計一般的に、高齢法が定める「継続雇用制度」(一年単位の契約更新による有期雇用)を採用してシニア層の処遇を決定している企業では、年収水準を定年前より3〜4割程度減少させる例が多くあります。にもかかわらず、職務内容は定年前と同一であることが大半であり、シニア層が不満を抱える原因になっています。この点、シニア活用を促進していく観点からは、シニア層が定年後に実際にになう職務や役割に応じた人事制度(特に賃金制度)を採用することが適しているといえます。シニア層をこれまでより積極的に活用していく方針であれば、定年後も現役に近い働きを続けてもらう以上、賃金水準はある程度高めに設定するべきですし、逆もまたしかりです。シニア層の能力や意欲に応じて、会社と本人が協議のうえで職務や働き方を設定できる仕組みを構築できれば、柔軟な運用が可能になります。筆者はこの方法を「コース別継続雇用制度」と定義し、推奨しています。また、この方法は、「同一労働同一賃金」への法対応も兼ねています(詳細は後述)。(2)定年延長にともなう人事制度設計定年延長を行う場合も、「シニア層の職務ないし役割」をベースとする継続雇用制度の考え方と基本的には同様ですが、正社員としての身分(無期雇用)が延長されることになるため、既存の人事制度との連続性をより強く意識することが重要です。筆者は定年前と同じ人事制度

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