エルダー2021年2月号
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2021.2162021.216はじめに前職でアメリカに駐在していたとき、当時の米国人上司が「日本は定年で仕事を辞めなければいけないという信じられない国だ」と話していました。一方で「多くの社員が終身雇用となっており、20代で入社してから約40年間、クビになることなく会社の期待に応え続けている。企業も長きにわたり、社員から見て魅力的で働きがいのある仕事を提供し続けている。これはすごいことだと思う」とも話していました。その上司はよく日本からの出張者や駐在員の愚痴を聞いていたので、ジョークでいっていたと思いますが、「70歳就業」という話を聞くと、つい思い出してしまう昔話の一つです。本稿では、70歳までの就業機会確保に向け、企業としてどのようなキャリア支援が重要になっていくのか考えていきたいと思います。これまでのキャリア支援2020︵令和2︶年はコロナ禍による在宅勤務/テレワークの広がりも大きな要因の一つとなり、ジョブ型※1雇用制度の導入に向けてさまざまな検討の動きが広がっています。ただ、多くの企業はまだ従来のメンバーシップ型※2であり、ジョブ型に移行した企業においても、結果としてメンバーシップ型にかなり寄った "日本独自のジョブ型" になっていると感じています。企業内で行われるキャリア支援も、このような雇用状況をベースに、定年退職や再雇用をゴールとした時間軸で考え、在籍期間においてベストパフォーマンスを発揮してほしい、というのが本音なのではないでしょうか。キャリア支援施策のなかで、多くの企業が行っているのがキャリア研修です︵図表1︶。「過去をふり返り、自分自身を見つめ直し、将来をイメージする」ことは、長く働いていくなかでは必要なことです。しかし、企業や社員を取り巻く環境が大きく変わってきているうえ、同世代の社員間でも多様性が広がっていることから、「研修での気づきが浅く、その効果に持続性がない」という声を多く耳にするようになってきました︵図表1内「ミドル・シニア社員の現状について」︶。厚生労働省が進める「セルフ・キャリアドック」※3の環境を整えている企業では、社内メンターやカウンセラーの制度を導入することで、より個に寄り添ったキャリア支援を行うケースも増えてきました。ただ、改正高年齢者雇用安※1 ジョブ型……職務内容を明確に定義し、「仕事」に「人」をあてはめる雇用の形。欧米を中心に多くの国で採用されており、職務、労働時間、勤務地が原則限定される※2 メンバーシップ型……「人」に対して「仕事」をあてはめる雇用の形。仕事内容や勤務地を限定せず、ジョブローテーションをくり返しながら長期的に人材を育成する70歳就業に向けたキャリア支援のポイント株式会社パソナ キャリア支援事業本部 プロジェクト戦略部 キャリアデザインチーム 山下弘晃解説2

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