エルダー2021年2月号
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2021.218アも多いでしょう。しかし、その長く、一貫性がないキャリアを通じて、経済産業省の提唱した「社会人基礎力」※4に磨きをかけてきた方が非常に多いはずです。特に現在の50~60代は、日本のGDPが大きく伸びたときに現場の最前線で活躍していました。その業務を通じて得られた「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」は社内でも、業界・業種を超えても、十分に活かせる力だと思っています。図表2は、パソナの再就職サービスを利用した「50~65歳」の再就職先を示したものです。ご覧のように、同業界・同職種に転職している方は10%前後に過ぎず、多くの方はこれまでとは違った領域で活躍しています。同じ会社のなかで、同じ知識や経験値の方と過ごすだけでは、残念ながらこの社会人基礎力を自身だけで認識することはむずかしく、「自分に自信がない」と思っている方が非常に多いと感じています。アセスメントツールの活用や、社外カウンセラーとの壁打ち※5の機会を通じ、自身の力を再認識することは、キャリア支援の第一歩として重要です。■社外を知らない長い間、同じ会社で働き、また特に転職などを考える機会がなかった方は、社外の労働市場についてほとんど情報を持っていません。世の中には本当にさまざまな種類の仕事があるにもかかわらず、現在の業務に関連する仕事や、生活のなかで見えている仕事しか考えられない方が多いのも事実です。また、悪い話のほうが耳に届く傾向があることから、「転職すると給料が下がる」、「Aさん、転職して2カ月で辞めたみたい」、「他社は文化・風土が全然違う」などと社外を否定的に考え、興味を持たなくなってしまう方も多いと思います。だれでも遅くとも定年のとき、もしくは再雇用を終えたときには社外に出ることになります。最近の調査によると、ローンの完済年齢の平均は73歳という結果が出ていました。また健康寿命も伸びていることから、70歳まで、あるいはそれ以降も働きたい、社会とかかわっていきたいという方は増えています。そうであれば、社外の情報を早いタイミングで把握し、社内にいるときから準備することも大切です。最近は兼業・副業を認める企業も増えてきました。一方、アンケートの結果を見ると、給与補ほ填てんのような目的の方が多く、また労働時間管理などの問題があるため、人事部門からは兼業・副業導入がむずかしいとの声もよく聞きます。この兼業・副業をキャリア施策の一つと位置づけることで、導入のハードルを少し下げることが可能だと思っています。現在、就職を目ざす学生のほぼ全員がインターンによる就業体験を行っています。養う家族や社会的責任もさらに大きなミドル・シニアならばなおさら、次の世界に進むにあたり、リスクを減らすための「お試しの機会」が必要で※4 社会人基礎力……「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の三つの能力から構成される「職場や地域社会で多様な人々と仕事していくために必要な基礎的な力」として、2006年に経済産業省が提唱したもの※5 壁打ち…カウンセリング手法の一つ。悩みや思いを口に出してぶつけること※筆者作成図表2 シニアのキャリアチェンジ年齢とともに、異業界異職種へのキャリアチェンジが増加期間:直近3年間(※活動終了日が2017年9月~2020年8月の方)エリア:首都圏(一都三県)0%20%40%60%80%100%10%30%50%70%90%50歳51歳52歳53歳54歳55歳56歳57歳58歳59歳60歳61歳62歳63歳64歳65歳16%45%16%24%16%45%18%20%16%50%11%24%15%49%14%22%14%49%16%20%10%57%14%19%12%55%15%18%9%59%13%19%10%57%14%18%9%60%17%15%6%71%10%13%4%75%6%16%7%63%14%16%5%71%15%9%4%63%18%14%65%12%24%同業種同職種同業種異職種異業種同職種異業種異職種

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