エルダー2021年2月号
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特集高年齢者雇用安定法が改正 ー70歳までの就業機会確保に向けてーエルダー19す。キャリア研修やメンター制度は、社員からすると受け身の施策です。自律度を高めていくには、小さなステップでもかまわないので、自らの意思で動く能動的な施策が有効です。もし兼業・副業制度の導入がむずかしいのであれば、キャリア研修のなかに「社外体験」を取り入れるのも一案です。先の見えない時代に長く働くことはたいへんなことですが、特にミドル・シニアは長い経験のなかでつちかったすばらしい財産を持っています。まず、自信を持っていただき、そして、社外も知ることで自身の偏差値を理解し、強みをさらに伸ばし、弱みを補う。もしくは、弱みをカバーするテクニックを身につけることで、長いライフ・キャリアの土台をさらに強固なものにしていく。70歳就業の時代には、そんなキャリア支援が求められています。キャリア支援のプラットフォーム「うちの社員はキャリア自律していない」という声を聞くことがあります。詳しく聞いてみると、会社として提供しているのはキャリア研修のみというケースが多いようです。ミドル・シニアのように社会経験の長い方に「キャリア自律してください」とメッセージを出すだけでは、ときに逆効果になってしまうこともあります。まずは、会社としてキャリアを考える風土を意識してつくり、高めていくことが重要だと感じています。経営陣からの社員目線でのメッセージや、定期的なイベント、社員の主体性を活かす制度や施策などを展開し、文化と風土を醸成することが必要です。人事部の担当者には、いままでにはなかった知識や経験が求められます。社外との交流や、社外労働市場に対する理解をいままで以上に深めていくことで、より現場のニーズに応えられるキャリア支援の実現が可能になると思います。さらに、社員と日々接している上司に対する支援・育成も重要になっています。役職定年制度を導入する企業も増え、上司が年上の部下とコミュニケーションを取る機会が増えています。ときには上司として厳しいことを伝えることも重要なポイントですが、それができないばかりに、会社も個人も不幸な結果になっているケースも見受けられます。社員だけではなく、マネジメントをめぐるキャリア教育、コミュニケーション教育もさらに重要になってきています。よって、図表3に示すように、キャリア支援のプラットフォームを構築するためには、社員・人事・上司それぞれに、新たな自覚と役割が求められます。おわりに2020年はコロナ禍というまったく想定外のことが起こり、企業にも、個人にも、大きなインパクトがありました。会社に属して働いている以上仕方がありませんが、会社の業績で人生が想定外に激変し、不幸になることは避けたいと強く感じています。「ウィズコロナ」、「アフターコロナ」はキャリアを考えるよい機会であり、キャリア支援施策を充実させるベストなタイミングかもしれません。※筆者作成図表3 キャリア形成プラットフォームの構築上 司社 員人 事個々の社員に寄り添ったキャリア支援職場、上長によるキャリア支援社外にも強い、プラットフォームの要キャリア自律キャリアコンサルタント

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