エルダー2021年2月号
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2021.222時に見直した60〜65歳の処遇のあり方である。現在の制度は、定年時に一律に報酬が減額され、その後も評価制度の対象外であるため、「再雇用後は、のんびりやればいい」という意識を助長しかねない。そこで、意欲の出る報酬体系を検討し、具体的な制度をつくり上げた。等級の再格づけと評価による処遇を行う「マイスター制度」(60〜65歳)まず、60〜65歳が対象の「マイスター制度」について説明しよう。基本的には、「通常の正社員と同じ仕組みを取り入れることで意欲を高める」というコンセプトとなっている。60歳で定年になり、その後は1年毎の契約で再雇用されるのはこれまでと同じだが、新制度では、再雇用時にその人を再評価し、その人に見合う等級に再格づけする。旧制度では一律に定年時の6〜7割に減額された再雇用後の毎月の給与は、新制度では等級に応じた報酬額となる。ここで用いる等級は、その人の職務遂行能力に応じた能力等級で、正社員と同じ枠組みだ。ただし、60歳でラインの管理職からは外れる。正社員の等級制度は、ラインマネジャーがМ1〜М5の5等級、担当課長など組織を持たない管理職層がS1〜S4の4等級、非管理職がE1〜E6の6等級に分かれる。ラインマネジャーだった人は、ライン以外の管理職、または非管理職に移ることになる。賞与は、正社員と同じように目標を立て、達成度を評価して支給額に反映する仕組みになっている。評価の仕方も正社員と同じで、目標達成度を基本に10段階程度の〝絶対評価〞で評点をつける。なお、賞与額には、個人の評価だけでなく、所属する部門の評価も反映される。等級の再評価にあたっては、正社員と同じ能力等級を用いている。再雇用後も同じ等級だった場合、報酬額は旧制度より上がるので、今回の制度改定によって人件費は増加すると想定される。しかし同社は、その点をまったく問題視していないという。「試算はしましたが、今回の制度改定により、一生懸命働いてくれる人が増えることが期待できます。従来は、嘱託になった人の代わりに中途採用や外注を行っていましたが、そうしたコストが抑えられると考えています。多い年には30人程度を中途採用しますが、それを2〜3人でも抑えられれば、増加コストの回収は可能と考えています」と菅原部長は語る。同社が必要とする専門性を有しており、同社の理念や文化も熟知し、社内外の人間関係もできている人が、長く、やる気をもって働いてくれることは、会社にとっても大きなメリットがあるのだ。労働時間はフルタイム勤務が基本で、仕事の内容は原則として、定年までと同じ職場で働いてもらうことを想定している。ただし、その部署の部門長から「この人は別の仕事のほうが向いている」あるいは「同じ仕事の継続がむずかしい」といった申請がある場合は、経営層が判断を行うという。希望者全員を70歳まで雇用する「シニアマイスター制度」(65〜70歳)これまで、65歳以降は、会社が必要とする人だけに残ってもらう形だったが、「シニアマイスター制度」では、希望すればだれでも65歳以降も働くことができる。菅原英明人財総務部長

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