エルダー2021年2月号
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特集高年齢者雇用安定法が改正 ー70歳までの就業機会確保に向けてーエルダー25う1年契約の再雇用制度を整備している。さらに、パート社員については65歳まで無期雇用とし、雇い止めの不安を解消。馴れ親しんだ職場で長く安心して働ける環境を構築した。こうした高齢者雇用制度改定の背景について、人事部の岩いわ崎ざき泰やす久ひさ勤労厚生室長は次のように話す。「専任社員の定年延長については、該当する大半の社員が65歳まで働くことを希望しており、店舗の運営者も高齢社員の雇用確保を希望していたという状況でした。特に同じ店舗で長く働いてきた人は、『この先もこの店で働き続けたい』と考えるようです。社員や店舗の希望を汲み取っての制度改定でしたから、対応としては定年の契約形態を変更するだけで、非常にスムーズに導入ができました。再雇用制度については、65歳以降も8時間のフルタイムで働きたいという高齢社員が多く、こうした就労意識の高い高齢社員たちのニーズに応えることができたと思います。当社には短時間パート社員(1日4時間〜、週5日勤務)、長時間パート社員(1日6時間〜、週5日勤務)のような短時間勤務の働き方があり、これと合わせて、高齢社員の働き方の選択肢が広がったのはよかったと思います。定年を65歳まで延長したことで、長く働き続けることができる安心感を感じてもらえています」他方、正社員の定年は60歳、再雇用は70歳までで契約は1年毎の更新だ。これはベイシアグループの企業間で足並みを揃えているもので、現時点では定年延長の予定はないという。独自の雇用形態区分「専任社員」を定年延長店舗で直接採用を行う「専任社員」はカインズ独自の雇用区分である。正社員の場合は本部で採用され、ジョブ・ローテーション・システム(配転教育)によって、数年ごとに職種や店舗を変えながら幅広い経験を積んでいく。店舗で採用される専任社員は、原則として職種替えや異動はなく、各店舗の建築資材コーナー、農業資材コーナー、サイクルコーナーといった売り場での接客がメインとなっており、各部門の専任担当者として売り場に立つ。専任社員を各店舗で地域採用することについて岩崎室長は「ホームセンターは地域に根ざした事業を展開しています。例えば、園芸や農業資材は地域によって扱う農産物が異なるために、使用する農薬や肥料も異なります。そうした地域に根づいた知識と経験を持つ『地域生活のプロ』を、その地域内から採用することは理にかなっているのです」と説明する。専任社員にはキャリアを通してつちかってきた知識を存分に発揮し、買い物客に最適な提案をしてもらうことを期待しているため、専門知識を持つ人材を採用することになり、結果的に中途採用が多くなる。専任社員の前職は、競輪の選手や兼業農家、趣味でガーデニングやDIY※を極めた人などがおり、多くの人が自分の好きなことにたずさわりながら自分の経験を活かすことができる環境に惹かれて応募してくるという。正社員の平均年齢が35歳であるのに対し、専任社員は50〜55歳と年齢は高めだ。もっとも、特定分野の専門知識を持つ人材を募集することは容易ではなく、専任社員に対する定年引上げ※ DIY……「Do It Yourself」の略語。自分自身で何かをつくったり修理したりすること人事部の岩崎泰久勤労厚生室長

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