エルダー2021年2月号
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特集高年齢者雇用安定法が改正 ー70歳までの就業機会確保に向けてーエルダー27る昇給が行われるのは60歳までとされていたが、定年延長とあわせて65歳まで昇給可能な制度へと改定した。社員としてのモラルを維持し、モチベーションを保って働き続けてもらうには、努力に応じて昇給する可能性を広げるとともに、前もってそれを示すことが有効である。岩崎室長は「昇給機会が伸びることでモチベーションが上がったと考えています」と実感を口にする。そのほか、専任社員を対象にした人事考課以外の昇給制度も設けている。入社1年経過後、毎年3月に行われる「技能判定」に合格した場合に昇給できるというもので、無級から技能3級に昇級すれば、日給に千円、2級になればさらに2千円、1級に昇級すればさらに3千円がプラスされる。入社時の日給は店舗により異なり、技能級の上限は職種によって異なる。年齢に関係なく経験を活かした努力に応じて昇給が可能な仕組みの導入により、社員のモチベーション向上につなげている。ホームセンターは高齢者が活躍できる職場専任社員にかぎらず、高齢のパート社員やアルバイト社員も活き活きと働き、活躍しているカインズ。約2万3千人いる全社員のうち、約2千人が60歳以上の高齢社員だという。「ホームセンターは取り扱う種類が多いので、自身の趣味や主婦の経験など、長年の人生で学んだことを接客に活かせます。ホームセンターのお客さまは若年層から高齢層までと客層が幅広く、高齢社員には特に高齢のお客さまの対応を安心して任せられます。このように私たちが高齢社員へ抱く期待も、活き活きと働きやすい環境の一つではないでしょうか」と、岩崎室長は分析する。とある店舗の園芸売り場には、60歳を過ぎてから採用され、80歳を超えたいまも精力的に活躍するアルバイト社員がいるそうだ。なお、専任社員、パート社員とも充実した教育研修制度を用意しており、さまざまな研修会や勉強会に参加することができる。商品知識はもちろん、生活全般の幅広い知識が身につくと好評だ。また、業務に必要な資格取得への支援も後押ししている。もちろん高齢社員の身体的負荷を軽減するための配慮も怠っていない。ホームセンターは資材など重い商材を扱うことがあり、その移動には想像以上に体力を要する。そこで高齢者に負担がかからないように、業務内容を細分化することで、高齢者が行う業務領域を限定し、高齢者でも問題なく対応できる身体負荷の少ない業務を任せるほか、労働時間の面でも残業が発生しないよう配慮しているという。再雇用であれば1年に1回行う契約更新の際に、体力面などを考慮しながら契約内容を見直し、場合によっては勤務時間を短くするなど柔軟に対応しているとのことだ。「実際のところ、当社は社長以下、スタッフをみんな『メンバー』と呼んでいて、分けへだてなく働いており、年齢で区別することはありません」と、岩崎室長は話す。社名であるカインズの由来は「親切」という意味の「kindness(カインドネス)」。お客さまに対してだけでなく、ともに働くメンバー全員に対しても、親切心を持って接することが社風として根づいており、互いを思いやる気持ちが世代を超えて強固な一体感を生み、カインズの大きな原動力となっている。最後に岩崎室長は「年齢が高い社員はそれぞれ接客が好きな人、商品の品出しやレジが得意な人など、活躍するフィールドが異なると思います。得手不得手は若い人より顕著なので、本人のニーズと会社のニーズが合致するところで活躍する場をつくることが、高齢社員に活躍してもらうためには大事だと思います」と締めくくった。

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