エルダー2021年2月号
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2021.22エッセイスト 岸本裕紀子さんが、一生懸命に働き、実績を残しながらがんばってきた。そのことを知ってほしいという思いも執筆の動機です。それから5年ほどの間に、高齢者を取り巻く状況や働く環境も大きく変化しました。政府も高齢者が仕事をすることを奨励し、60代の人が働くことも普通になりました。いま、私の世代がちょうど再雇用が終わる年齢にさしかかり、あらためて働き続ける女性に焦点をあてて書こうと思ったのが2冊目の本です。―定年後も活き活きと働くたくさんの女性が描かれていますが、どんなところに働く目的や、〝働きがい〞を感じているのでしょうか。岸本 働く目的は、もちろん生活のためというのが一番です。そのほかに仕事が好きだから、ほかにやることがないからと理由はさまざまですが、現場が好きだからという人が多かったですね。管理職になって人をまとめたいというのではなく、現場の仕事で直接いろいろなものに触れたい、またそれが楽しいと―テレビドラマ化もされた著書『定年女子〜これからの仕事、生活、やりたいこと』に続いて、定年後も働き続ける女性を取材した『定年女子〜60歳を過ぎて働くということ』を出版されました。執筆の動機は何だったのでしょうか。岸本 最初の本は私自身が定年とされる年齢にさしかかり、元職場の同僚や同級生たちは定年になったらどうするのだろうか、さびしいのか、それとも解放されたと感じているのか、という素朴な疑問から取材をスタートしました。ちょうど定年後再雇用制度が始まったころです。調べてみると定年を迎える女性は年間10万人もいる※2。都市部だけではなく、むしろ地方に多いということも驚きでした。 私の世代は男女雇用機会均等法もなければ、産前産後休業はあっても育児休業はありませんし、〝女性活躍〞の後押しもありませんでした。そのなかで女性たちは働き続けるために切り捨ててきたものも多かったと思いますいう人が多い。おそらく、現役時代の一番忙しかった時期は子育てもたいへんですし、家のこともいろいろやらなければいけなかったので、定年後は悠々自適の暮らしを夢見ていた人もいるかもしれません。でも、目の前のことを一生懸命にやっていくうちに50歳を過ぎると、仕事をしているほうが自分らしくいられると感じているようです。 60歳以降も働く女性を取材して感じたのは、いま置かれている状況をチャンスととらえ、おもしろいと思っていることです。最初の就職先は自分の人生設計、例えば結婚して子どもを持つかもしれないので安定的な雇用や収入がほしいなど、長期的な視点でそれが叶うような仕事を選んだ人もいると思います。しかし、第2ステージの60歳以降の仕事選びは、長期的展望はいらなくなる。以前からやりたかった仕事であるとか、あるいは若い人たちと接し、「いろいろなことを教えてもらうことが楽しい」とか、仕事自体がおもしろいから働くという考え方に大きく変わるのです。男性は過去のキャリアにこだわって仕事を選ぼうとする人もいますが、そういう女性はほとんどいませんでした。 例えば、割と堅い会社に勤めていた女性は、いま置かれている状況をチャンスととらえ仕事がおもしろいから働くという女性が多い※2 「平成24年版 働く女性の実情」(厚生労働省)より

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