エルダー2021年2月号
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エルダー39作業配置転換などを行います。この場合、産業医などの意見を聴くとともに、本人の同意を得ることが必要です。②個々の高齢者の状況に応じた業務の提供個々の高齢者の健康や体力の状況に応じ、以下の点を考慮し、安全と健康の両面に適合する業務をマッチングさせます。↓業種特有の労働災害、労働時間、作業内容↓ 業種特性をふまえた必要な心身機能(例:運輸業は運転適性)↓治療と仕事の両立↓ワークシェアリングの適用③心身両面にわたる健康保持増進措置事業者による健康保持増進対策には、健康測定とその結果に基づく運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導などがあげられます。厚生労働省「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を参考にします。また、事業者は、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」に基づき、①衛生委員会等における調査審議、②心の健康づくり計画、③4つのメンタルヘルスケアの推進(a.セルフケア、b.ラインによるケア、c.事業場内産業保健スタッフ等によるケア、d.事業場外資源によるケア)が求められます。(7) 高齢者の特性をふまえた安全衛生教育を行う高齢者は、ほかの年代と比べ、十分な教育効果が得られにくいといわれています。過去の研究報告をみると、例えば、高橋らは危険要因知覚教育ツールを用いた作業者教育の効果検証において、高年齢者の教育効果が十分に見受けられないことを明らかにし※1、また、筆者の研究においても、安全講習内容の理解度の調査において、高年齢者の理解度はほかと比べ高くなく、その理由として、高年齢者の多くは、長年にわたり現場で実践してきたことや学んできたことが新たな教育により間違っていると示されても、それを受け入れることが容易ではないと推察しています※2。このため、以下の通り、高齢者向けの特別な安全衛生教育が必要になります。● 十分な時間をかけ、写真や図、映像などを活用します。● 未経験業務に従事する場合、ていねいに教育訓練を行います。● 心身機能の低下が労働災害につながることを自覚させます。● 自らの心身機能の低下を客観的に認識させます。● わずかな段差など、周りの環境に常に注意を払わせるようにします。働く高齢者に求められていること3本ガイドラインで、職場で高齢者みずからに求められていることは以下の通りです。● みずからの心身機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めます。● 定期健康診断などを受診します。● 体力チェックに積極的に参加します。● ストレッチ、軽いスクワット運動により基礎体力の維持に努め、生活習慣を改善します。● ラジオ体操、転倒予防体操などの職場体操に参加します。● 適正体重の維持、栄養バランスのよい食事を摂るなど、食習慣や食行動を改善します。● ヘルスリテラシー(健康・医療情報を理解・活用するための能力)の向上に努めます。おわりに4本稿ではエイジフレンドリーガイドラインの概要を紹介しました。特に、高齢者一人ひとりの健康や体力の状況を把握し、それに応じた対策を行うことがポイントです。しかし、このような取組みを行っている企業は、現状ほとんど見受けられず、人生100年時代に向けた今後の課題といえます。※1  高橋明子,高木元也,三品誠,島崎敢,石田敏郎:建設作業者向け安全教材の開発と教育訓練効果の検証,人間工学,Vol.49,No.6,pp.262-270,2013.※2  高木元也:中小建設業における安全教育の実態と課題-管工事業対象のアンケート調査の分析-,土木学会論文集F4(建設マネジメント)Vol.72,No.4,pp.I_11~I_22,2016.高齢社員のための安全職場づくり―エイジフレンドリーな職場をつくる―

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