エルダー2021年2月号
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の範囲をかなり広くとらえているように思われます。会社が先に支払ったか、労働者が先に支払ったかということによって、労働者が負担すべき割合が変わるということは結論としても妥当ではありませんので、当然の結論とい労働時間について1労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」(最高裁平成12年3月9日判決、三菱重工長崎造船所事件)と定義されており、労働時間であるか否かについては、使用者と労働者の契約や就業規則などの主観的な関係で定めるのではなく、労働実態をふまえて客観的に定まるものとされています。えるかと思います。実際の割合は、控訴審へ差し戻しされた結果を待つ必要がありますが、補足意見の内容をふまえると、会社の負担割合はかなり大きくなる可能性があると考えられます。このことからいえるのは、指揮命令下にあるか否かという実態に即して、労働時間管理を行わなければならず、ノー残業デーを徹底するにあたっても、その観点から取り組んでいかなければならないということです。労働実態に変更がないような場合には、たとえノー残業デーを周知していたとしても、それだけでは時間外労働が発生してしまう余地があり、残業をなくすことを実現することがむずかしいでしょう。時間外労働について2時間外労働の典型的な状況は、使用者が明示的に時間外労働を命じた場合です。この場合には双方の認識が合致しているはずであるため、労働時間管理に問題は生じないはずです。例えば、残業について事前許可制を採用しており、労働者の事前申請に対して、使用者において、申請を許可しているような場合には、双方ともに残業することを認識しています。一方、ノー残業デーを周知しているにもかかわらず、労働者が残業を行っているような状況は、使用者の明示的な命令はなく(むしろ残業をしないよう周知している)、労働者としては業務を遂行しており、使用者の指示と労働者の行動がちぐはぐになっている状況です。ちぐはぐな状況であったとしても、労働時間は客観的に判断するということになるため、たとえ使用者の指示や認識が残業を命じていないとしても残業が労働時間となってしまう場合があります。明示の時間外労働の命令がない場合の考え方としては、労働者の業務遂行が、①使用者の黙示の指示によって求められている、②残業をしなければ制裁があるなど事実上残業を強制されている場合などには、労働時間として認められると考えられています。ノー残業デーについては、残業禁止を明確に命じるとともに、残業せざるを得ない環境も同時に解消する必要があります。Aノー残業デーを徹底する際の留意点があれば教えてほしい時間外労働を減少させることを目的にノー残業デーを設定しているのですが、依然として残業を継続する者がいます。これらの残業に対しては、どのように対応すればよいのでしょうか。残業している者からは、「業務が残っているため残業せざるを得ない」という言い分が出ており、対応に苦慮しています。Q22021.242

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