エルダー2021年2月号
49/68

■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー47間に医療施設に連れていくなどの対応が必要なものもあり、フルタイム就労が困難な場合もあります。この場合は、業務負担の軽減を図るために、勤務地・職務・勤務時間のいずれの限定も有効となります。もう一つは人材の取込みです。かつては、正社員なら辞令による転勤はあたり前というイメージがありましたが、特に若い世代を中心に転勤を望まないという意識が高まっています。例えば、「2019年度新入社員の会社生活調査」(産業能率大学総合研究所)を見ると「一度も転勤せずに同じ場所で働きたい」が36・4%に達しています。これは、全国転勤しか選択肢がない場合には、採用のターゲット層が狭まることを意味しています。また、非正規社員で優秀な人材が正社員転換を望んでも、「フルタイム就業で転勤あり」がハードルになります。そもそもフルタイムがむずかしいのでパートタイマーという働き方を選んでいるケースが多いからです。この場合、勤務地や時間を限定すると正社員転換がスムーズになります。「限定社員」は、高齢者雇用にも有効です。定年後再雇用の場合は、勤務地や職務・時間を限定して処遇を見直すという運用をとっている企業も多く、これとは別に本人の希望や事情に沿った多様な働き方を提示することで、社内には従来なかった経験やスキルを持ったシニア人材を採用できる可能性が高まります。限定社員の普及には課題も多いこのようにさまざまな効果が期待できそうな限定社員ですが、「令和元年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)によると、令和元年度の時点で制度ありの企業が28・2%と導入が大きく進んでいるとはいいがたい状況にあります。また、同調査の利用者割合を見ると、もっとも多く利用されている勤務地限定正社員で10%程度と低い水準にとどまります(図表)。導入が進まないのは、人員配置の課題が大きいためと想定されます。例えば、複数部署や拠点を有する会社で、勤務地限定や職務限定が利用されすぎると、欠員が出た場合の補充やローテーションがやりにくくなります。また、管理職層や経営層になるにあたり、異動を通した幅広い視野や経験が必要な場合もあり、限定社員に対してはこのような機会を付与することができなくなります。また、利用率が低いのは処遇の課題が大きいと考えられます。限定されただけ業務や精神的な負担が減るとみなし、その分の処遇を引き下げるというのが一般的な運用です。昇格に上限を設ける、給与や賞与を一定程度引き下げるといった格差です。完全に同一処遇にすると限定のない社員から、格差をつけすぎると限定社員から不公平感を持たれるというジレンマがあります。人員配置と処遇の課題が一体であり、人員配置のポリシーを明確にしないと、限定社員の導入をどこまで推進するかが見えてこないというのが実際のところといえます。☆  ☆今回は「限定社員」について解説しました。次回は「賞与」について取り上げる予定です。出典:厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」注1:多様な正社員制度がある事業所の常用労働者を100として集計した注2:「利用者」は、平成30年10月1日から令和元年9月30日までの間に制度を利用した者をいう図表 多様な正社員制度の利用者割合(%)男女計女性男性常用労働者計利用者女性常用労働者計利用者男性常用労働者計利用者短時間正社員制度平成30年度100.02.6100.05.0100.00.6(100.0)(86.3)(13.7)令和元年度100.02.2100.03.8100.00.8(100.0)(80.7)(19.3)勤務地限定 正社員制度平成30年度100.010.4100.012.2100.09.0(100.0)(51.0)(49.0)令和元年度100.09.6100.011.8100.07.8(100.0)(55.4)(44.6)職種・職務限定正社員制度平成30年度100.08.5100.010.0100.07.4(100.0)(48.9)(51.1)令和元年度100.09.3100.011.0100.07.9(100.0)(53.4)(46.6)

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る