エルダー2021年2月号
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エルダー49特別企画先進企業における高齢者雇用のトレンドと今後ではなく、満まん遍べんなく進めているように感じます(詳細は51頁参照)。及川 図表1をご覧になった感想はいかがでしょうか。内田 「新規採用」や「意識啓発」に取り組む企業は少ないですね。特に「新規採用」が少ないのは、長く社員に活躍してほしい企業が多いためでしょう。また「意識啓発」が少ないという結果は、定年などを機に役割を大きく変える企業が少数派であることを示しています。上地 後者が少ないのは、表彰企業の多くが中小企業であることと関係がありそうです。内田 そうですね。大企業では、多くの場合、定年を機に期待役割を大きく変えます。中小企業では、高齢期もプレイヤーとしてがんばってほしいという企業が主流です。表彰企業では、特に〝現役社員のときから会社でがんばってくれている人に、高齢期も同じような役割で長く働いてもらう〞ことを、意識した活用をするという特徴があります。及川 では、表彰企業は何に力を入れているのでしょう。内田 「健康管理・安全衛生」分野の取組みが目を引きます。「作業施設等の改善」分野と重なりますが、長い活躍を求めるため、高齢社員の身体的負担の軽減に取り組む企業が多いです。上地 介護業界では、施設利用者を介護するときにロボットを使う企業や、無理な作業姿勢にならないように清掃機械を導入した企業などが表彰されていました。内田 そうですね。健康管理に着目すると、休憩室に血圧計を設置したり、産業医との面談機会を増やしたり、人間ドックなど健康診断にかかる費用を助成するなど、身体的・精神的な健康維持への支援も充実しています。身体的負担の軽減にかぎらず、社員の健康増進に投資する企業も多いです。及川 そのほかに、注目する取組みはありますか。内田 企業と高齢社員のニーズをマッチさせる企業が多いですね。及川 「勤務時間・日数」の調整などでしょうか。内田 そうです。健康上の理由から、定年前のようにフルタイムで働けない人もいます。そういった場合、通院が必要となる社員の事情も考慮し、休暇取得に配慮する企業もあります。また、趣味など健康以外の理由で、定年前とは異なる勤務日数を希望する人もいますね。高齢社員の活躍を望む企業では、多様なニーズを満たす選択肢を用意しています。上地 近年、「評価・処遇」分野も増えています。こちらも高齢社員のニーズと関係があるのでしょうか。内田 はい。2004年改正の高年齢者雇用安定法の施行当時は、高齢社員を人事評価の対象とする企業は少なかったと記憶しています。当時は、高齢社員には、定年前と同じ活躍を求めていなかったからです。この結果、定年を機に賃金水準を下げる企業も多かったわけです。でも、「定年前と同じようにがんばってほしい」定年・継続雇用勤務時間・日数評価・処遇新規採用職場の風土づくり技能伝承新職場・職務の創出作業施設等の改善健康管理・安全衛生意識啓発能力開発100.0%92.1%73.0%11.1%54.0%39.7%61.9%63.5%79.4%19.0%77.8%出典:『エルダー』10、11月号(2015~2019年)より、上地作成図表1 分野別の取組み状況

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