エルダー2021年2月号
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2021.252裁量で個別に対応するケースも多かったわけです。最近の特徴は、経営者や人事部が継続的な改善を進める「実施体制」を整え、同時に個別対応ではなく、人事制度を整えています。及川 何がきっかけなのでしょうか。内田 高齢社員数の増加です。少子高齢化と2012年改正の高年齢者雇用安定法の影響があるでしょう。上地 人数が増えると、運用重視から制度化に切り替わるのですか。 内田 小さな会社では経営者も社員も、それぞれの事情をわかっていることが多いでしょう。ですから高齢社員の雇用が柔軟に個別対応されても、周りの社員からの納得も得られやすいと思われます。しかし、規模が大きくなればルールを定めて明示する制度化の方が公平性を保てます。及川 ほかにも、制度化を進める積極的な利点はありますか。内田 社員が安心感を得られることです。例えば、就業規則上は66歳までの雇用としていますが、運用上75歳を超えても働ける慣行があったとしましょう。66歳以降の雇用継続は社長の判断で決まる場合、66歳以上の社員は来年も働けるか不安になります。しかし、就業規則上に上限年齢と雇用される条件を明記すれば、その条件を満たせば来年も働けるとわかり、社員は安心して働けるようにもなります。及川 公平性や社員の安心感が高まる利点があるのですね。将来の話―AIやICTの活用―及川 これまでは、コンテスト表彰企業の現状と過去をみてきました。最後は、将来です。今後は、どのような取組みが増えますか。内田 図表1にある、取組みの少ない分野が増えるでしょう。上地 「新規採用」と「意識啓発」ですね。内田 そうですね。例えば、「新規採用」です。2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、努力義務ですが、65歳以降は自社やグループ会社以外で雇用する措置も継続雇用に含まれます。社外から人材を採用するケースも増えますから、高齢社員の定着支援も徐々に注目されるでしょう。及川 一方、すでに多くの蓄積がある分野では、どのような変化があるのでしょうか。内田 「作業施設等の改善」では、AIやICTを使った取組みが増えると思います。最近の事例でも、人による見回りの代わりに、AIのセンサーを設置した事例もありました。社員の負担が減り、高齢社員が働きやすくなります。AIやICTの活用が進むと、高齢社員が活躍しやすい環境が整うことが予想されます。上地 AIやICTの進化により、高齢社員にかぎらず、人間に求められる役割は的確な判断や指示になってきますね。内田 そうなれば、高齢社員の経験や知識が、企業の競争力の源泉となることでしょう。及川 最後の質問です。今後、「競争力を高めるための高齢者雇用」に取り組む際、どのように考えることが大事ですか。内田 今回、いろいろな事例をみて思ったことは、高齢者雇用のきっかけは人手不足など、当「高齢社員の経験や知識が企業の競争力の源泉になる」と話す

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