エルダー2021年3月号
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基調講演2021.38本日は、4月1日に施行される高年齢者雇用安定法の改正内容と、事業主の方々にご留意いただきたい「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」の概要をご説明します。現行の高年齢者雇用安定法は、60歳未満の定年は禁止としたうえで、65歳までの雇用確保措置として、65歳までの定年引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを事業主の方に義務として取り組んでいただくもので、31人以上規模の企業では99・8%の企業においてこれらの措置が実施されています※1。今回の法改正では、65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業確保措置を講ずることが努力義務として新設されました。この努力義務は、①定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、②70歳以上まで引き続き雇用する制度を除いた継続雇用制度を導入している事業主の方々が対象となります。この法改正では、人生100年時代を迎えるなか、働く意欲がある高齢者の方々が能力を十分に発揮できるよう、その活躍できる環境の整備を行うために、個々の労働者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上で整えました。まず、①70歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③70歳までの継続雇用制度の導入。これら三つは、雇用関係のなかで70歳までの就業確保をしていただくものです。加えて、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事する制度の導入をする、というものです。この④と⑤は、雇用関係ではないなかで70歳までの就業機会を確保していただくもので、「創業支援等措置」と呼んでいます。なお、③の70歳までの継続雇用制度は、65歳以降70歳未満までは特殊関係事業主※2に加えて、他社で継続雇用を行うことも可能です。④と⑤の創業支援等措置について、特に⑤の社会貢献事業に継続的に従事できる制度の導入は、a.事業主が自ら実施する社会貢献事業と、b.事業主が委託・出資などをする団体が行う社会貢献事業があり、このa、bいずれかに従事できる制度を導入していただくものです。いずれの場合も、有償のもの※3にかぎるとされています。ここでご注意いただきたいのは、④と⑤の創業支援等措置は、雇用関係によらない措置ですので、労働関係法令の適用がありません。このため、創業支援等措置を講ずる場合は、創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数労働組合等の同意を得て、その後に労働者に周知するという、いくつかの手続きが必要になります。70歳までの就業確保措置は努力義務ですが、事業主のみなさまにおかれましては、改正法の趣旨をご理解いただき、労使間で十分にご協議のうえ取組みを進めていただきまして、また都道府県労働局やハローワークでは措置の導入に向けた相談支援を行っておりますので、ぜひご活用ください。高年齢者雇用安定法改正について〜70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)等について〜厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用開発審議官達た谷が窟や庸のぶ野なお東京※1 厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」(令和元年6月1日時点) ※2 特殊関係事業主……元の事業主のグループ会社のこと※3 業務に従事することにより、高齢者に金銭が支払われるもの

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