エルダー2021年3月号
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基調講演特集高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考えるエルダー9社員の20%を高齢社員が占める時代に高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会を確保することが事業主の努力義務として新設されました。その環境を整備する選択肢として、雇用によるものと雇用によらないもの、合わせて五つの選択肢が示されていますが、やはり、雇用によるものが中心になるだろうと思っています。では、「65歳以上の高齢社員の人事管理をどう構築するか」ということが課題となるわけですが、その際の人事管理は、60代前半層の人事管理をきちんと行っていれば、65歳以上も同じであると私は考えています。本日は主に65歳までの人事管理についてお話ししますが、ここをしっかり構築しておけば、65歳超にも十分に対応していくことができるということです。高齢社員の人事管理を整備するうえでまず念頭に置いていただきたいことが、高齢社員の割合です。約5人に1人、つまり、社員の20%は60歳以上の高齢社員である、ということ。会社に占める高齢社員の割合は、こんなに大きくなっているということです。この人たちにがんばってもらわないと、経営上、企業は深刻な状況に陥ることになります。もう一つ認識しておきたいのは、60歳を超えても働き続けることが、もはや普通のことになっている、ということです。私は、生涯働く「自営業主型働き方」への回帰であるといっているのですが、昔はみな、農業や自営業で年齢に関係なく働いていました。それが、高度成長期以降、急速に組織で働く雇用者が増えて、定年制度などができ、定年=引退というような社会ができました。そこからまた、年齢にかかわりなく働くようになってきたというわけです。これらのことをふまえると、まず、これだけ大きな社員集団となった高齢社員の重要性は、企業経営にとって、とても大きな存在となりました。つまり、高齢社員の活用について、企業も労働者も本気になって向かっていく必要がある、そういう心意気を持っていただきたいと思っています。人事制度は社員に対するメッセージ現状では、60歳定年が主流であり、定年以降は再雇用で継続雇用する制度が一般的となっています。人事管理をみると、多くの場合、60歳前は正社員で、再雇用後は嘱託などの非正社員となり、正社員用の人事管理と、60歳以降の非正社員用の人事管理を共存させる「1国2制度型」の人事管理となっています。このこと自体に問題はないと思いますが、再雇用後の高齢社員に対応する人事管理がなかなかむずかしく、現状では、問題があるように見受けられるケースが少なくないように感じます。多くの企業では、再雇用後、同じ仕事を継続して担当してもらっていますが、職責や成果期東京高齢社員の戦力化に向けた賃金・評価制度〜合理的な人事管理とシニアに必要な意識転換〜学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎

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